牧郷ラボの夜は、
星がいっぱい見えるほど
山の影がまるで見えないほど、暗い。

やかんを火にかけて、
トイレに行こうと階段を降りたら
踊り場の窓から外が見えた。

…あれ、明るいな。
もしかして、映画見てる途中で寝ちゃって、もう明け方 !?

驚いて、慌てて窓に顔を近づけて空を見た。


あ…そうだった~、今日は満月だった。

そういえば、今回の満月は月と地球の距離がいつもより近いのだと
送られてきた地球暦のメールマガジンに書いてあったっけ。

ほっとしてそのまま空を見ていたら、今度は、
チカチカ光るいっとう明るい星が目の前に飛び込んできた。


シリウスだ。

いつもチカチカしてるけど
ここぞという時、
こいつはますますチカチカと瞬いて何かうったえる。

外に出なよと促されている気がして
「はいはい」とつぶやく。
「どうやら外に出るみたいよ」とひとりごちて
階段を昇ってやかんの火を止め、それからくだって、ふらりと外に出た。

出た瞬間、空を見上げて、一歩、一歩、
吸い込まれるように、ゆっくり歩いた。

立ち止まった。
時間が止まったみたいに。
それから、ゆっくりと思う。

…これは、さしものシリウスも、外に出なよ、と言うよねー。

明るい。夜じゃないみたい。
黄色く、青白い月。
完全に強い。
それなのに、太陽の直接光よりもやさしい、間接照明みたいな光だ。


まじまじと月を見つめる。
思いが、沸いてくる。

シリウスがチカチカしている。
月光浴、シリウス浴。
自分の思いを溶かして
彼らの思いを受け取る。

思いはシリウスに後押しされて月に帰り、
それからストンと、私の中に納まった。

外に呼び出してくれたシリウスにお礼を言って
もやもやしていた核心を優しくクリアにしてくれた月にお礼を言って
くるりと、部屋に戻った。
私があげられるものは、お礼と、無意識の伝達だけだなと思う。

ことばがなくても通じ合えることがある。
何を言っているかわからなくても、何か言いたいということはわかる。


それはなんというか、お互いに。


最近、そんなことがよくある。

これは、今日起きた、そんなお話。


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なんて書いてたら、タイミングよくHeliosの曲が流れた。
太陽も、忘れてませんて(笑)。