ひと月ほどの間に
たき火の機会が立て続けにあった

寒さを蹴散らす温かさと
天に昇っていくパワフルさと。
パチパチとはぜる瞬間のエネルギー

樹木が炭に変わり、灰に変わっていく

その流れが
冬の初めのシンとした空気から
隔絶するように私たちを取り囲んだ

火は、守護の力があるのだ



無闇な直感


それからしばらくの間、空を見上げ
首を下げて、じっと炎を見つめる

それから、思いついたように横を向いて
周囲の人と会話を交わす

繰り返しながら
まるで、人と星と火と森と
みんなで会話しているような気分になってくる
ぐるぐるぐるぐる、毛糸玉を紡ぐように
会話をあちこちへ飛ばし合い

ひかりの筋が夜空を横切ったあと
真上にあったシリウスが
ほんの数秒激しくまたたいた


都会暮らししていた私も、今では
都会のスピードに驚くようになっている
不便なところでは暮らせないわという人がいるけれど
それは、本来の、時の過ごし方を忘れているというだけなのかもしれない

本来のスピードは、この毛糸玉のように
ゆっくりで、なめらかで、やわらかなのだ

その時の流れに至れば、
自然に抱かれ、いつでもそこに戻ってくると
安心し、理解できる



山のようにあった薪がひと抱えの灰になって
太陽が、私たちから屈託のない笑顔を引き出す頃

万物の繋がりがはぐくむ恵みが
いつでもこの世界の中にあると、確信できる。

$藤野町で山暮らし~フジノぼんの日々