カート・コバーンの最期というスキャンダラスな内容を期待している人は落胆の色を隠せないだろう。それほどにシンプルで(その意味で)退屈な映画だ。きらびやかなところやドラマティックなところはまるでなく、刻々と迫るその時間だけが描写されていく。無意識のうちに時間の窮地に追いこまれた彼の、苦悩と廃退と孤独が、悲しいわけでもつらいわけでもなく、ただ経過していく日常としてそこにある。







真実は当人にしかわからない。まして、他人が(その意味で)自分を理解することなんてありえない。通常、人はその決定的事実に気づかないふりをしている。あとには絶望と孤独しか残らないからだ。……これほど揺るぎなく、残酷な真理がほかにあるだろうか。そしてそこから目を背けることができなかったのが“彼”なのかもしれない。