谷崎 潤一郎

猫と庄造と二人のおんな
飼い猫リリィとリリィを溺愛する庄造、そしてその猫に嫉妬や憎悪を抱くふたりの女の、虚しくも生々しい関係性を描いた小説。猫の行動描写と、ペット(ここでは猫であるわけだが)に依存する人間の微妙な心理とそのぶれが、読んでいる場面ごとにありありと目に浮かんでくる。
彼の書く猫は、たとえば今私の目の前にいる猫よりも猫らしく振る舞う。
リリィに、触われるかとすら思った。