私の夫はスナイパー (浅草番外編3)

ニキータよ…

もう前置きは省くわね...

この大人気シリーズ(汗)も
とうとう今回がラストになるわ...

ここ浅草で・・・
あの人に気付かれぬよう

人混みの中、尾行を続ける私...

しっかし、なんなのアレ・・・？

人混みでも、あーなの？

通行人があの人の背後に立とうもんなら

クルッとその人に

向き合う形になる...

背後に立たれる度に

・・・クルッ、・・・クルッ

しかも腰を低く落として、

両手まで広げて・・・

まるで一流バスケ選手の

ディフェンスじゃない・・・

やられた人、みんなびっくりして

呆然としてるじゃないの...

あんなに目立って、

あれでよくスナイパーっていう職種、

やってけてるわね...

多くの人が行き交う仲見世通りを

クルクル回りながら
進んでいく、あの人。
どんだけ
面倒くさい人なのよ！

本当に、今までどうやって
生きてきたのかしら？

ふと何かに気付き、

路地裏に入っていくあの人。

ショーウィンドウに貼りついて、

しきりに中を覗き込んでいる…

何を見てるのかしら・・・？

モ・・・

モンチッチ？！

色んなバリエーションの服を・・・

その時、急に形相が険しくなったかと思うと

あの人はショットガンを取り出し、

モンチッチに向けて構えた！

ダッ、ダメよ！

そんなところで発砲しちゃ！

何か気に障ることがあったのかも

知れないけど・・・あなたプロでしょ！

心の中で、そう叫ぶ私...

そんな思いが通じたのか、

あの人はなんとか
平常心を取り戻し

ショットガンをしまい、再び歩き出す。

しばらくすると・・・、

またあの人が不意に立ち止まって

何かを食い入るように
見つめている。

その視線の先にあったのは・・・

んっ、何なの？

なんかのポスターに見えるけど・・・？

この位置からじゃ
よく見えないわ。

私は、周囲を警戒しながら

小型の双眼鏡を取り出し覗き込んだ。

「葵と楓...」

誰なの？

なにか思い詰めた様子で、

微動だにしない夫。

あっ、今なら・・・

あの人の周りには人がいないわ。

ここからなら流れ弾が、

他の人に当たる心配もない。

チャンス到来！
いっ、今だわ！

人ごみに紛れ、夫に狙いを定める私。

ごめんなさい、あなた！

ちょっと痛むかも知れないけど、

そのデキモノを放置していると

命が危ないの！

分かって、これが
あなたの為なの…

あの人の背中のど真ん中・・・

服の上からでも分かる

もっこりとしたその部分に

狙いを定めながら、、、















断腸の思いで、引き金に掛けた指に

徐々に力を入れてゆく...
チャー・・・

シュー・・・





今だわ！
メーーーンッ！！

消音装置「音姫」を付けた

AE50 デザートイーグル
が火を吹く・・・

その瞬間、あの人の後ろを

おじいさんが通りかかる。

条件反射で、
クルッと振り返るあの人・・・

(このシーン、スローモーションで...)

あっ・・・
ダメーーーッ！

泣きそうな声で、叫ぶ私。

(しかし、その声も音姫にかき消される...)

…崩れ落ちる様に
倒れる夫。

真っ青になって銃を放り投げ、

あの人に駆け寄る私。

正座した状態で、

夫を抱え起こす...

胸元からは、ひどい出血が・・・

愕然とする私...
助けて・・・くだ・・・さい。






助けてくだ・・・さい。












助けてください！！
天を見上げ、
泣き叫ぶ私・・・

(カメラは上空からのアングル)

Your Love Forever

瞳をとじて 君を描くよ
それだけでいい～♪

たとえ季節が 僕の心を
置き去りにしても～♪

(平井堅の「瞳をとじて」が流れる)

完
なんだこれ...(汗)