作品タイトルの 「ナニカアル」という語が物語り前半で登場した。読み進めると共にそれが「 何か起きて欲しくないことが起きるのではないか」と言う不安に対する予兆だったように思える。
そもそも作家「林芙美子」の事は
作品おろか名前さえ知らなかった。
この本はその「林 芙美子」が体験した戦時中、特に日本占領下の東南アジアでの物語り。
いつものように話が逸脱してしまうのが…
戦時中は壁に耳あり障子に目あり うっかりしたことを言えば「赤」認定
赤ではなくとも、知識層の多くが英米には勝てないと思っていてもそれを口に出す事はすなわち自滅。 結局多くの個々人が自らと家族の命を守る事と引き換えに、言論は封殺され真実を知らぬまま庶民は徴兵され空襲で街を焼かれ、命を失ってしまった。
なんだか今の感染症下の自粛社会と同じようなものが根底にあるような気がして空恐ろしくなった。
この小説でも軍の断り難い依頼で戦地に出向き、軍政下の各地を軍の指示に沿ってレポートする作家「林芙美子」の苦悩も「林芙美子」自身の恋愛などと絡めて綴られいる。
今まで10冊ほど桐野夏生先生の著作を拝読させていただいたが、この作品の印象が一番心の奥深くまで浸透した気がしている、あたかも小説という媒体に身を委ね大東亜戦争を体験したかのように…