つまらない大人とはどんな人か?とアナウンサーが訊いていた。

 自分のこと、自分の利益だけを主張してくるような人、そんな風に佐野元春は答えていた。

 NHKのラジオ深夜便に出てますよ、と友人がメールをくれたがリアルタイムでは眠いので聴けず、今日聴きのがし配信で聴いた。

 ノスタルジックな話もあれば、二十代からのメールの紹介もあって、賑やかな内容だった。またアナウンサーがいかにもNHKらしいしゃべりだが、意外に音楽に詳しいのも面白かった。

 今日は電話の向こうの人に、その人には嫌なことを言わざるを得なかったので、こちらの気分も低迷した。状況は改善する余地はなかったのだろうか?あったにしても、今さらどうもできない。わかったことを伝えるしかなく、方策は一つしかなく、後は動きようがない。

 こういう考えを持つのがつまらない大人なんだろうか?

 よくわからない。ただ、佐野元春の音楽は、そんな「つまらない大人」が聴いても、大丈夫僕にまかせて、とよりそってくれる。そう思う。

 「ここに嫌なやつは一人もいないぜ」

あの屈託のない笑顔でそれを言われる度に、ああ嫌な部分はどっかに置いてきちまったさといつも思う。

 十月の熊本のライブでは、久しぶりに佐野元春仲間と一緒に行ける。ロッキンクリスマスの熊本の時以来だから、もう6年経っている。その間コロナをはさんで、自分の仕事も変わってしまった。

 その仲間とは、互いにまだ知らない時、ストーンズアンドエッグズツアーにそれぞれで行っている。それを知った時に、

「あぁ良かったら坐って聴いてくれてもいいんだよ」

と言うと喜んでくれた。

 この世で大切なものはたくさんあるけれど、佐野元春仲間はその中でも大切な一つ。メールのやりとりをするだけで、ハートビートの頃に戻ってしまう。

 佐野元春は深夜便の番組の中で、「再定義」とは使わずに、「セルフカバー」で通していた。なんとなく、ラジオの向こうにいるのは佐野ファンとは限らないからわかりやすい表現を、とそんな感じがした。

 そういうことも含めて、佐野元春がいてくれてうれしい。(了)