ここのところ、原付で事故を起こされて、自賠責しか付けていないケースが二度続けてご相談があった。危ない話である。

 一件目はおけががたいしたことなくて良かったし、相手の車は任意保険があったので、相手保険会社からの連絡を本人が受けて、承諾して解決の方向に進んだ。横で、相手保険会社の提案は妥当かどうかについてアドバイスするだけで、後はスムーズだった。それにしても、相手も任意保険がなかったらと考えるとぞっとする。

 二件目は、相手に一方的に損害を与えてしまったが、どうしたらいいかわからず、結果相手は放置状態におかれたため、時間の経過とともに相手被害者の怒りが増幅した。自賠責は「保険」という名がついているが、物損には効かず、また示談交渉を誰かができるわけでもない。しかしそのことを知らない人はかなり多いんだろうな、と認識させられる事案だった。

 原付に限るわけではないが、任意保険・共済を付けずにいる車両は全国で十一%から十二%。およそ8台に1台が任意保険なしで走っている。

 任意保険なしで事故を起こしたときは、弁護士に委任して相手との交渉をしてもらうのが一番だと思う。自動車保険の「弁護士費用特約」では、過失なしの被害事故のときにしか委任できないので、自費で委任することになる。その費用の捻出が難しいからといって、代理人となれる資格のない人に相手との交渉を委任してその人が受けて交渉したら、弁護士法違反となる。

 費用がなければ、相手とのやりとりは本人がして、後方待機の人にアドバイスをもらいながら進めるしかない。

 上記二件の事故は、それぞれ損害が小さくて済んだから良かったものの、数千万円~数億円といった額の支払いを命ずる判決もまれではない。自転車の事故ですら一億円近くの支払いの事例があるわけだから、原付のスピードであればもっと深刻なケースは用意に想像できるし、想像してもらいたい。

 電動キックボードとモペットがだんだん多くなって、そういう無保険車が増えている。自転車を含め、そういった乗り物は全て免許制にしてナンバープレート、自賠責、そして任意保険の強制化でもしないと、泣き寝入りする被害者もまた増えるはずだ。(了)