長女夫妻が帰っていって、今までに増してロスがきつい。
自分のロスもそうだが、妻のロスはもっとひどいように感じる。夏休みで帰省した長男が帰っていった後は、翌月の長女の帰省があったからなんとかなっていたのが、これでイベント終了となったから、相当なものだろうと思う。例によって、自分の存在は何の役にもたたない。
帰りに長女夫妻は、施設の祖母のところに寄っていった。定員オーバーで外で待っていたから、何を話したか知らない。母は長女が贈った扇子を「ハイカラ」と表現したことしかわからない。
施設の代表の人は、四人はだめですが、そしたら二手に分かれてどうですか、と提案された。「私はいつも会っていますから」と遠慮したが、代表者のこころとしては、職員に対して二名ずつなら言い訳が立つと想像した。
面会希望者から言われたからどうぞでは、ゆるゆるになって、それが五名六名、職員さんも、あの時は何名も入れたではないですか、とか言ってくるかもしれない。
気の優しい人だからこそ、原則二名(三名まで可)、をかたくなに守っているのに違いない。
そんなことを思っているうちに、制限時間の十分が経って、妻と長女夫妻の三人が出てきた。
「(来てくれて)ありがとう。元気でね。」
夫くんに、そんな風な言葉しか思いつかない。知り合いが急逝した直後だから、心から本当に元気でいてほしいと思った。長女はいつものとおり、まるで高校の頃と変わらない。元気でね、と長女にも言う。
夫妻でセネガルの妹に会いにいくのかと思いきや、いくのは長女だけで、夫くんは留守番だそうだ。いろんなことを想像するが、今後どうなってもそれは長女の人生である。
セネガルの二女に本を買って、長女に持たせた。友人から紹介された詩集。鳥肌が立ったから、今年の誕生日のプレゼントにすることにした。
去年の誕生日に贈った本は、郵便局留めになっていて、なかなか取りに行けず、こないだやっと行ったと八月にメールが来た。
なんでも構わない。メッセージは届くだろう。元気でね。(了)