人生は短いよ、という友人の言葉に背中を押されて、小倉までヤマニンウルスを見に行った。
約十年ぶりの小倉競馬場は、小ぶりで観客もそれほど多くなく、特に馬券を買う列がそれほど殺気立っていないので、ゆったりと時間を使った。
パドックで馬を見る。一番良く見えた馬が騎手を乗せて姿を消すまで見て、それからその馬の単勝を買う。それから新聞やオッズを見て、買った馬の人気を確かめる。中山に通っていたときと、行動は変わらない。
ヤマニンウルスのプロキオンステークスまで4レース買って、全く当たらない。ただ、9レースの和田だけは、スタート五分で中段を勢いよく追走し、直線でも伸びてきた。その追い方に迫力を感じた。4着だったが、なんだか満足した。
ヤマニンウルスのレースには、プレストウコウを4代父に持つマリオロードが出ている。友人には複勝はこれ、と宣言していたものの、パドックで見るとハピとバスラットレオンに先着できるとは思わなかったので、結局買わなかった。購入金額の上限に達していたのにもよるが、どうだろう、黒い馬体に「キタサンブラック目」をした彼はいい雰囲気ではあったが、プレストウコウを微塵も感じさせないことが、見送った原因のような気もする。リプレイのゴール前では驚いた。
さてヤマニンウルス。584キロで前走からさらに2キロ増。でも「雄大な」という感想は出てこない。身のこなしが、体を持て余している感じはしない。
おっと思ったのは、止まれの後の立ち姿。素晴らしかった。バランスがとれて立っている、とは違う表現をしたい。四肢に均等に力が配分されていて、どこにも無理がなく立っている。首さしも伸びやかで、頭が小さく見える。この姿勢の良さがこの馬の力だと思った。
単勝は既に購入しているが、この立ち姿を見て、勝ちを確信した。
武が乗る。悠然としている。親父そっくりになった武の顔つきに、「邦ちゃん」と言いたくなる。
レースは圧倒的だった。武が左ムチを一発打ったのが「おっ」と思った。ゴール前でさらに伸びた。力が余っている。
1.7倍もついたのは不思議だった。(了)