『モンテ・クリスト伯』を読むと、本筋とはさして関係ないところだが、投資のことが何回も出てくる。昔からお金持ちさんたちは、投資をまじめにやっていたんだな、と思う。この情報が彼に伝わらなければとか、伝わっていたらとか、なんかそういうことだった。

 さてファイナンシャル・プランナーの勉強をして、資格を全部取得したら、なんだか投資について人に伝えるのがばかばかしくなった。

 リスクは投資をする人の自己責任です。ああそうでしょうとも。

 これだけ物価が上がり、株が上がりしている現在は、ほとんど金利がつかない預金を持っていること自体がリスクです。はいそうですか。

 必ず増えるなんて決して言ってはいけません。そうでしょうね。

 思うのが、自分はコーチングで飯を食おうとするのは好きではないということ。したがって、自己責任を標榜する一方で、高いコーチ料(名目はそうではないが)を実質とっているような金融商品の販売は、誰かに任せるのがいい。

 購入した人が困ったときに、寄り添って不安を取り除くことが本来自分がやるべき仕事だと思う。

 そう見極めたのは昨年の秋。

 スタンスが定まると、そういう方からの問合せが多くなった。やることはたくさんあるよ。FPでコーチングをしている人がまともに対応しないことの中に、人生の本音がたくさんある。

 元騎手の田原成貴がインタビュー記事の中で、こんなことを言っている。

「もしあなたに自由になる金が十万円あるのなら、十一万円で僕の馬券を買ってほしい。それで僕と同じ感覚でレースに参加することができる。」

 自分の仕事というのは、これである。目の前の相手と同じ感覚で、その相手が対峙している困り事に当たる。

 そのときに自分が費やすのは、時間だ。抱えている何をいつまでにそのために今これを、そんなことを全部振り捨てて現場に向かう。

 誰が何のために俺に金を払っているのか?そういうことのためではないのか?

 それがわからない奴が同じ仕事を表面だけやっていることが糞だ。(了)