梅干しをほめられた。うれしい。
いつも母の惣菜を作ってもってきてくれる方。男性。
ちょっと赤色は足りないし、種には梅酢が浸みていない。けれど梅のいい匂いがして、うま味は上等。そんな風に思っていて自信がなかったから、(その方からもらった梅で造ったのだが)小さいガラスの容器に入れて数個持ち帰ってもらった。
「どうでした。」
「うまい!」
その一言で解放された。お世辞は言わず、歯に衣着せぬもの言いの方なので、掛け値無くうれしかった。もっとくださいとも言ってもらった。少し大きい容器があるのでそれに入れて次回渡そう。
「土用干しがうまくいったようです。塩加減は母。合作。」
と補足した。
母の塩加減は、何年も梅干しを造っていないにもかかわらず、昔からなじんできた塩加減であった。たいしたものだ。
もう一つ母の手による工程は、赤じそを入れるところ。
うちの造り方は、梅を大きなガラス瓶に、塩を振りながら入れ、梅酢が上がってきたら赤じそを入れる。ここからが私で、土用の頃に全部の梅をざるに並べ、ベランダに置く。一個一個ひっつかないようにする。それで一日。陽が陰ったら室内に入れる。翌日梅をひっくり返して同様に一日。計2日の工程。ただし今年は二日目に天気が悪くなったから半日で室内に引っ込めて、翌日半日陽に干した。
それで赤じその入った梅酢に戻した。後は赤く染まった梅酢で色がついて浸みていくのを待つだけ。
ただ今回は梅酢がそれほど上がらなかったので、全部の梅が梅酢に浸らない。なので色と浸み具合が中途半端かな、と思った。
でも上のような感想をもらったので、(梅酢が出て、土用干しをやった時点で勝負あり、なのか)と認識した。よって「梅干し」というのだろう。
レシピを書いておくなんてことは、母がそのうちいなくなることの準備作業なので、しない。
万事がこんな具合だったらいいのに。(了)