虹がきれいな夕方。車の進行方向に掛かっていたので、いい気分のドライブ。松田聖子の「ガラスのプリズム」を頭の中で鳴らす。彼女の声は何年経っても思い出せるけど、バックの音はどうだったっけ。
虹はとりわけ軽く浮かんでいた。さっと刷毛で、みたいな。きつい円弧じゃなく、そうね、ショートケーキの半分くらいの円弧。いい感じ。
色が気になった。赤橙黄緑青藍紫と歌ってみても、橙と藍色はよほど意識してもぴんとこない。もちろんボーダーレスで分光しているのだから、七色と言えば七色。五色と思えば五色。今日は四色。赤が弱いな。紫と黄色が目立つし。
きれいな虹。こんな虹にまためぐりあうのはいつのことだろう。
母は私の陽性判定の三日前にコロナ陽性になり、まあ無事生還したが、おそらく水分が足りなかったのが原因で、心房細動になった。心臓がぶるぶる震える不整脈の一種で、
「どんなことになるんですか?」
「血栓ができやすくなります。それが脳に行けば脳梗塞」
そんな風にかかりつけの医者から言われたから緊急態勢になった。
入院まではまだ必要ないと言う。血液さらさらの薬を出しましょう。それで改善しなかったら?心房細動の薬を出します。
日常は水分補給、と言うから、それを満足させるには介護施設、そう判断し、通院翌日から九月いっぱいの予定で施設に入れた。本人が水を飲もうとしないから、私が横に張り付いておられない以上、そうするしかない。
数日前、母の膝に水が溜まっているようだ、と施設から掛かってきた。整形外科を受診するのを勧められたので、その日にそうした。
母を施設にやってほんの数日であるのに、私の実家における仕事のペースは落ち着いていた。気持ちが安定しているのがわかった。
そこに整形外科受診である。私は母の世話にいらつき、整形外科の会計を済ませると、施設に電話を掛け、母の送迎を依頼すると、母をそこに置いたまま仕事に戻った。
さらに三日、母の体調は落ち着いているそうだ。私は母と会わないことで、気持ちの平静を得ている。
虹がきれいに見えたのは、そういう平静さがあったからだ。よくわかる。(了)