あれから
どれだけの時間が過ぎたのだろうか。

気付くと救急車の中にいた。
その後、どういうルートでぼくが救急車に
乗れたのかはよくわからない。




ただ、目が覚めると、
胸と背中が死ぬほど苦しい。

妻と息子はあんな事故があったにも、
かかわらず元気な様子だ。
救急車の助手席に息子が座っていて、
「大丈夫だよ!」
と声が聞こえてくる。
妻は隣にいて、ずっと身体をさすってくれる。


ボディーチェック、
五感チェックをしてもらい、
レントゲンなどをとるために、
最も近くのバーンズレイクの街の病院へ搬送。


すると、そこには、お世話になってる校長先生が…ストレッチャー越しから見えて泣く。

大丈夫だから!
と言ってくれ、安心をもらう。

レントゲンの検査結果では、
様々なところに異常が…
バンドルを筋肉で固定して衝撃に耐えたため、
肺、胃、腸が衝撃を受けて鬱血してるという。
さらに、肋骨の骨折、背骨の異常がある。


だから、プリンスジョージという、
さらに大きな市の病院に救急車で搬送する
と言うのだ。

妻も息子も大丈夫だったから、俺も痛みが引けば大丈夫だと少し笑顔で答える。

ただし、筋肉が膠着してるので、
呼吸ができない。

ノドがからからでつらいのに、水も飲めない。
安心ではないから、水をあげられないそうだ。
水が飲めないのは、本当に辛い。


バーンズレイクのお医者さまが、
もっと精密検査をプリンスジョージで
受けた方がいいと強く言うので、
また搬送されることになった。


転送準備前に、
ミスターmorryが病院に駆けつけてくれた。

ぼくは、アイムソーリーしか言えず、
車を破損して廃車になっただろうことを、
あやまりまくったのだが、彼は一言
チューブだらけのぼくを抱きしめて
「シー、イッツオーケー!シー」
と言っておデコにキスして帰っていった。


申し訳ない気持ちでいっぱいのぼくに、
言葉でなくキス。
イギリス王室の皇太子そっくりのmorryは、
どれだけカッコいいんだ!
と、苦しみながら涙が出た。


息子はここでお別れとなり、
ミスターmorryの家に泊まることになった。

妻は救急車の助手席に乗り、
ぼくは、ストレッチャーに乗せてもらい、
400キロ離れたプリンスジョージを目指す。