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2020年5月11日
大学病院での大腸カメラ検査の日。

 

 

午前2時まで
下剤を飲んではトイレに行き…
 

を繰り返しているうちに

力尽き、

途中で記憶がなくなり


気がついたら

午前6時。

 

 

起きて

あたたかいお風呂に浸かり
ゆったりと
体を温めてから
少量の水を飲み
身支度を整える。

 

 

「検査の2時間前には
 水も
 飲むのをやめてください」



書かれていたので、


この後
検査が済むまでは
喉が渇いても
何も飲めない。

 

 

 

こういうこと

(「〜したらダメです」という

 制限されるようなこと)への

耐性が低いわたしとしては

苦しい時間でもありますが

 

あまりそれを

考えないようにすることで

何とか乗り越えよう、

と決める。

 

 

 

 

 

以前の診察の時、


大腸カメラ検査で
まれに腸に穴が開くことがあって、
その場合は
緊急手術になるので
だれか付き添いの人を、

 

と言われ

今日の検査には

父に付き添いを頼んでいたため、


洗濯をすませ
娘と車に乗り込み
父を迎えに行くと


母も
一緒に出てきて
見送ってくれました。

 

 

 

2人とも
娘が癌かもしれない
ということに
心を痛めているだろうに


にこやかに
いつもどおり
寄り添って

むこうから歩いてきました。

 

 

 

そんな姿を
遠目に見て
 

「あぁ わたしは
 いつだって
 こうやって
 この2人に
 見守られてきたのだな」
 

と思い
ちょっぴり
涙が出そうになる。

 

 

 

 

実のところ
日常には
こういう
味わい深い瞬間が
あふれていたのだ


ということに
気づかせてもらい、
 

わたしは
こういう状態でありながら

 

いや、

こういう状態だったからこそ
 

不思議と
「しあわせだなぁ」
と感じる時間が
増えていました。

 

 

 


 

 

 

 

受付をすませ
看護師の問診を終えて
大腸カメラを撮る部屋へ。

 

 

検査用の服に着替えようとすると

ネットで調べたとおり
おしりのところに
穴のあいたハーフパンツを渡され

 

ひとり
 

「ははは。
 ネットで見たまんま〜

 おもしろい」
 

となる。

 

 

 


こんなときでも
ふとしたことで
クスッと
笑える自分がいるのが、
ちょっとうれしく

愛おしくもありました。

 

 


一瞬その穴の空いたパンツを
スマホのカメラで撮影したい、
と思ったけど
「バカな女だ」
と思われるのがいやで
撮影するのをやめました。

 

 

 

別に
バカだと思われたって、
やってもいいんだけど。

 

 

 

 

そうやって
世間の
常識に合わせて
自分の


「やりたい」
 

を引っ込めるのでなく、


「やりたいことをやる!」
 

というのが
わたしの
今回の
人生のテーマ
なのかもしれないな、
とふと思う。

 

 

 

 

あ、
でも
基本病院内は撮影禁止
ってどこかに書いてあったもんね、、


とか思う
真面目な
わたしもいたりして。
 

 

 

 

 

わたしにとって

 

大人になる、

大人である、

 

ということは

 

本来の自分のしたいこと

本来の自分が

面白いと思うことに

 

蓋をして

ぎゅうっと

押し込めてしまうような

 

そんな窮屈な

体験になっているなぁ

と感じました。

 

 

 

本当は

もっと自由に

ありのままの自分で在りたい、

 

そう願いながら

 

それを制限しているのは

他でもない

自分自身なんだな、、

 

そんなふうに感じる瞬間でした。

 

 

 

 

 

 

 


部屋には
検査をしてくれる男性と
女性看護師さんと
わたし。

 

 

 

ベッドに横になると同時に


「はあぁぁ〜…」
 

とため息がもれ、
2人がクスッと笑う。

 

 

 

 

カラダがしんどくて
少し動くだけで
 

「はぁ~」
 

となるのだけど、

わたしの
そんな事情を
知らない二人は

 

「いやですよね〜
 ため息出ちゃいますよね〜」
 

と笑った。

 

 

 

あ。そうね。

確かにそれもある。


やっぱ
人におしり見せるの
やだよ。

そして
おしりに
つっこまれるのも、
いたくてやだ。

 

 

 

 

気は重い。

 

はじめてのことで
緊張もする。

 

 

 

そして、
寝不足と
下剤のおかげで、
はじまる前から
すでに
カラダは
くたくたでした。

 

 


でも
二人が
クスッとしてくれた
おかげで
ちょっと
気が楽になったのです。

 

 

 

こんな
ちょっとした
他人の振る舞いが


わたしには 
あたたかな
愛の波動
となって
伝わってきて
 

ほっとするし、
うれしくなりました。

 

 

ほんとうに

ありがたいなぁ。
 

 

 

 

・・・・・

 

 

 


カメラスタート。

 

わたし「映像ってどこで見えるんですか?」

 

看護師「ここですよ」「見ますか?」

 

わたし「うん。見たい」

 

(と言いながら、
 

「うん。見たい」ってなによ?
「はい。見たいです」でしょ?


 と自分に
 ツッコミをいれる
 変に大人ぶったわたしがいて、


 こんなときに、なんだ、わたし、
 

 と思う。
 

 人間って
 ほんとうに
 面白い生きものだなぁ)

 

 

 

 

看護師さんが

モニターを
見やすい位置に
変えてくれ、

 

ガッツリと

画面を見ていたら、

 

検査
始まって
すぐに
いました!

見るからに
ワルイ顔した
ヤツ(腫瘍)が、、!

 

 

 

どう見ても、


これはがんだな
 

と思えるような
そのお姿。

 

 

 

素人の
わたしが見ても、
色や形が
やばいってわかります。

 

 

 

それを見てしまったら

黙っていられなくて

医師に話しかけます。

 

 

 

わたし「あーこれ、

  がんじゃないですか?
  この色とか

  すごい色してますもんね」

 

医師「あーそうですねー
  今見たかんじだと

  その可能性は

  とても高いですねぇ」

 

わたし「ですよねー」


非常に

あっさりとした会話でした。

 

 

 

 

ショック
というか
なんというか、
 

「あぁそうか やっぱり」
 


深くうなずくような
感じでした。

 

 

 

がんがある、
ということに対する

抵抗や衝撃は
 

その時の
わたしは
あまり感じていませんでした。

 

 

 

この後、
すごくショックだ
と感じるのかもしれないな、

とは思いましたが、

 

それでも、
その段階では
心はとてもしずかでした。

 

 

 

 

検査をしてくれた医師は
とてもさわやかに
ハッキリと伝えてくれ、


その誠実さが
うれしく感じました。

 

 

 

もごもごされるより、
ハッキリと言ってもらう方が
わたしは好きです。

 

 

 

腫瘍が
良性か悪性か、
また
がんだとしたら
どんな種類のがんなのかを
調べるために、
 

腸の細胞を
ぷちっぷちっと
3箇所から採取していました。

 

 

採取後

腸壁からは血が出ているのに
わたしには

痛いという感覚がないのが
不思議だなぁと思いながら

画面を眺めていました。

 

 

 

腸と言う臓器は
痛みを感じないようです。

 

 

 

検査がおわり、
内科の医師に呼ばれ、

 

父と娘とわたし
三人でぞろぞろと部屋に入る。

 

 

「やっぱり
 しっかりと腫瘍がありました。
 

 今日、生検に出すので
 良性か悪性かの結果は
 また1週間後になります」

 

 

「手術になりますので、
 ここからは
 外科の担当になります。
 外科の先生に

 紹介状を書きますのでね」

 

と話しながら

 

その医師がパソコンに
かちゃかちゃと何やら

記入しているのを見ると、、

 


「直腸がんと診断したため、
 なんとかかんとか」
 

と書いてあるのです。

 

 

 

え。

いや、先生?


がっつり
がんて
書いてありますけども、、

 

 

 

あんなに
がんであることを
にごしていたのに、
 

がんと書いている

その内科の医師の行動に

呆れて一瞬

 

「へ?」と思い、

 

おかしくて

笑ってしまったけれど、

 

それでも
もうなんか、
実際大腸カメラの

あの画像を見てしまったら
 

がんということは
まちがいないらしいな、
 

ということはわかっていたため、
わたしは

ただ

腹をくくりました。

 

 

 

もう

 

がんということに

間違いないのね

 

なるほど。

よしわかった。
 

と。

 

 

 

 


「今日はもうおしまいです。

 次回の外科の予約をとってから

 帰ってください」
 

と言われ、
内科の医師と別れました。

 

 

 

なんだ、もうおわりか。
意外とはやかったな。

 

という印象。

 

 

 

父と娘に
付き添ってもらったのに
なんか
あっけなくて
 

「あれま

 もうおしまいなのね」
 

という感じでした。

 

 

 

「じゃ、
 お昼ご飯食べて帰ろっかー」


と話しながら、

 

医師に言われたとおり、
次回の予約をとるために
外科に移動しました。

 

 

 

外科の受付で


「いつがいいですか?」
 

と聞かれ

 

「できるだけ早くにお願いします」
 

と答えると

 

「わかりました。
 座ってお待ちください」
 

と言われ
待合の椅子に座って待つ。

 

 

 

パソコンで
わたしのカルテを見た
受付のその女性は、
電話をかけて


「ちょっと早いほうがいいかな、
 と思うんですけど、
 先生

 これから診ることできますか?」
 

と言っている。

 

 

「ん?」
 

と思いながら
聞き耳を立てていると、
 

どうやらこの後

外科の医師が
診てくれそうな感じになっていた。

 

 

 

そして
ありがたいことに、

本当に
その日のうちに
外科の診察を

受けることができました。

 

 

 

「まだ検査結果がでていないので
 わからないけれど、
 ほぼ、
 がんでまちがいないと思います」

 

とその医師は言いました。


 

 

 

でしょうね、
という感じで
 

「はい」
 

とこたえるわたし。

 

 

 

先ほどの画像や記録を見て

何となく肚が決まったので

やはり

まったく動揺はありませんでした。

 

 

 

「この後
 手術することになるので、
 手術に向けて
 必要な検査を
 今日この後、
 できるだけやっちゃいましょう」
 

と言われ、

 

追加の血液検査、
心電図、
肺の検査


をすることになりました。

 

 

 

「あと、
 胃カメラもやったほうがいいです」
 

と言われたので、
 

「先生 もし可能だったら
 胃カメラも今日したいです。
 さっき大腸カメラやって、
 ちょうど今日絶食してるんで」
 

と伝えると、


「そっか!

 じゃあ予約確認してみるね!」
 

と言ってくれ、


その日のうちに
胃カメラの検査も
受けられることになり

 

お昼ご飯は

もう少しの間

おあずけ、となったのでした。