パリ南郊外の家に越してから、パリへは一度行ったきり。
最初の滞在先に比べると、パリからは若干遠くなったため、
パリまで出かけるのが億劫な気持ちも出てきた。
木曜日はチケットを予約してオルセー美術館へ出かけた。
美術館好きの私にとって待ちに待った日だったが、緊急の用事が入り途中で切り上げて帰らざるを得なくなったという残念な1日となった。
しかもその日は素晴らしい天気で、パリはさらに輝いて見えた。
オルセー美術館を出て横断歩道を渡り、目の前のセーヌ、そして青空と白い雲をバックにしたルーブル美術館を一瞥しただけでC線駅への階段を下りなければならなかったときの失望感といったらなかった。
翌日金曜も外出ぜす。
そして迎えた今日土曜日。
週末で人出は多いだろうが、今日こそはパリを楽しみたい。
お天気もまあまあだ。
朝食、身支度のあと、パリの行きたいところリストから教会と公園をいくつか選んでノートに転記し、住所と最寄り駅を記す。
折り畳み雨傘の他に、日焼け止めもリュックに入れる。
手の甲が日焼けして、みすぼらしくなったのが気にかかる。
ユースキンをたっぷり刷り込んで手入れが必要だ。
準備に時間がかかり、出かけるのがまた遅くなった。
でも夏至も近いこの季節、1日は長いから大丈夫。
最寄駅からC線でオルセー美術館駅へ。
オルセー駅にはトイレがあった。
見つけたときには可能な限り行っておくことが肝心だ。
(よっぽど汚いときにはパスする)
それにしても、大きなRER駅なのにトイレが1個しかないとは!
「1か所」ではなく、1つしかない(一人しか利用できない)。
駅にトイレが1か所あって、男女別にそれぞれ3つの個室があるなんて贅沢はこの街では望めない。
男女兼用。
便座なんぞありません。
便器だけ。
でも、トイレがあるだけマシ。
あったとしても、壊れていて使用不可などざらにある。
オルセー駅のトイレは少なくとも壊れてはいなかった。
オルセー駅から徒歩数分のメトロ12番線Solférino駅まで、
そこからノートルダム・ド・ロレット駅へ。
パロワス・ノートル・ダム・ド・ロレット教会に向かう。
外観はあまり美しいと思わなかったが、中は美しかった。
「大理石と金の内装とオーク材でできた説教壇が見どころ」とグーグルマップにはあったが、説教壇には布がかけられており、見ることができなかった。
修理しているのかもしれない。
次の教会へ行くためにメトロ駅まで歩いているとTrinité – d'Estienne d'Orves(サントトリニテ教会)に遭遇した。
まだ改修工事をしている!
確かここは、2022年11月に来た時も改修していてカバーがかけられていた。
グーグルマップの写真で見ると大変美しい教会だ。
全貌を見たものだ。
改修後はさぞかし見事だろう。
再びメトロ12番線でSolférinoに戻り、オルセー駅のトイレに再び向かう。
4,5人が並んでいたため諦める。
歩き始めるがやっぱりトイレに行った方がいいと思いなおし戻る。
今度は若い外国人のカップルがトイレの前にいた。
メトロ切符を何度も入れてドアを開けようと試みている。
駅のトイレは誰でも使えるのではなくて、ナヴィゴパスをスキャンしないと扉が開かないようになっている。
近づいて、「どれどれ私が試してみましょう」
私がナヴィゴパスをスキャンすると扉が開いた。
若いカップル(他の欧州国からの旅行者のようだった)は私に礼を言い、女性は私に「お先にどうぞ」と言ってくれるた。
綺麗に化粧をし、赤い口紅が印象的な顔立ちの美しい女性だった。
先にいたのは彼らだったため譲った。
彼ら二人の後にトイレに行き、オルセー駅からノートルダム ドゥ ラソンプシオン教会に向かう。
1.1kmの距離。
大きな円形ドームの教会。
内部は思ったよりずっと狭かった。
ミサ?の音楽が流れ、数人がお祈りをしていたため、写真は控えた。
外に出て、さてこれからどこへ行こうかノートとスマホで計画を練る。
その日の候補地の中から、パレロワイヤル庭園と途中のチェイルリー公園に行こうと決めて、歩き始める。
チェイルリー公園は週末のため、人でいっぱいだった。
噴水周囲の一人用椅子もほとんど埋まっていた。
空いた椅子があったため、そこに座る。
しばし休憩しようとするが、椅子の背もたれの傾きが水平すぎて、体勢が定まらない。
チェイルリー公園より、リュクサンブール公園の方がずっと好きだと考えながら歩く。
チェイルリー公園を後にして、次はパレロワイヤルを目指す。
パレロワイヤルは、地図なしではまだ行けない。
オフラインマップを使っているが、効率が悪い。
ネットにつないだグーグルマップがあったらはるかに便利だろうが、
wifiがないため仕方がない。
パレロワイヤルには迷わずに行けた。
こちらも人でいっぱい。
隣接する公園内ではバラが満開。
こちらもベンチはほぼ埋まっている。
パレロワイヤル公園にも噴水がある。
チェイルリーにも、リュクサンブール公園にもある。
リュクサンブール公園の噴水は特に大きい。
噴水は心を和ませる。
パレロワイヤルの最寄り駅は、パレ・ロワイヤル=ミュゼ・デュ・ルーヴルという。
このメトロ駅の入り口は特徴的で、来るたびに写真を撮らずにはいられない。
iPhone には同じような写真がたくさん保存されているだろう。
それでもやっぱり、またカメラを向けてしまう。
今日は写真を撮った後、すぐに立ち去らずに建造物をしばし鑑賞した。
次は、ヴァル・ド・グラース教会だ。
B線のポート・ロワイヤル駅から1kmくらい。
ここから歩いても行けない距離ではないが、乗り物を使うことにする。
パレ・ロワイヤル=ミュゼ・デュ・ルーヴルからメトロ1番線⇒シャトル駅。
シャトレ-レ・アル駅からB線ポート・ロワイヤル駅。
シャトル駅からシャトレ-レ・アル駅までの乗り換えは結構な距離がある。
いつでも大勢に人が行き交っている。
地元の人も、仕事帰りの人も、観光客もいて、
パリのバイブレーションを感じる。
ここで乗り換えるのは好きだ。
地元の人と同じように速足で歩いていると、
自分がパリの一部 ―― 住人になったような錯覚に陥る。
二つの駅に間には動く歩道があるが、「動かない歩道」になっていることが珍しくない。
いや、結構な頻度で遭遇する。
人々は動く歩道用のメタルの上を黙々と歩く。
メタルは足の裏にぜんぜん優しくない。
普通の地面を歩くのよりも疲れる。
しかし、黙々と歩いている。
なぜこう頻繁に「動かない歩道」になるのか、もう誰も問題視しないのだろう。
私も黙々と歩く。
B線のホームに到着。
車内は結構混んでいたが、座れた。
3つ目の駅、ポート・ロワイヤル駅で下車。
この駅は見覚えがあるような、初めてのような。
ハッキリ思い出せない。
オフラインマップを頼りに、教会を目指す。
小さな雨粒がポツポツと落ちてきた。
嫌な予感。
歩を早める。
ポツポツから小雨程度になったため、傘を取り出してさす。
目的地らしきところに来た。
左手の入り口から入れるはずなのだが、鉄の門に鎖が巻かれ閉まっていた。
門の向こう側の敷地の奥にある建物の後ろに、教会らしき建物のドームがのぞいていた。
反対側に行けば教会に入れるのかもしれない。
しかし、足が疲れたし雨も降ってきたため、引き返すことにする。
結局無駄足で終わってしまった。
こんな日もあるさ。
B線ポート・ロワイヤルからサン=ミッシェル=ノートルダム駅まで行って、C線に乗り換えて帰った。
訪問した場所を写真で振り返るとともに、ルートのRERやメトロ駅を再度確認して、こうして文字にしてみると、ボンヤリとしてパッとしなかった印象の1日も、実は鮮やかな色に満ちた、大切な1日だったように思えてくる。
私、なかなか頑張ってるじゃないか、という気もしてくる。
こうして振り返って文章にして残すことができて嬉しい。
フランスにいる幸せ、電車一本でパリに行ける幸せを、もっともっと実感しよう。
もっともっと味わおう。