今日はスチュワート・ゴードン先生の講義の動画の1時間04分25秒から1時間08分58秒を訳します。
直訳の場合もあり、要約になる場合もあります。
譜例の演奏を聴けるタイミングを記しています。聴きながら説明を読むと、より理解して頂けると思います。
《ペダルの読み方》
ベートーベンはペダルを「Color(音色)を作る」ために使用をした。
彼のピアノ・ソナタの中で最初のペダルの記譜は、作品26に見られる。
第12番、作品26
第1楽章と第3楽章の終わりに使用している。
第1楽章216〜219小節
第3楽章74〜75小節
ペダルによってドラムの響きの効果が出る。音色を広く響かせることが目的となっている。
この様に独特の音色を作り出している。
(演奏@1:04:56)
「月光」第14番、作品27の2、第1楽章
この冒頭部分のペダルの指示は解釈が難しい。
上下2箇所に、"senza sordino"(=ダンパーなしで=ペダルを踏みっぱなしで)と指示している。
ここのペダルの指示は解釈が難しい。
ツェルニーは、「ベートーベンは、『終始ペダルを踏みっぱなしで』という意味で書いたのではない。和声が変われば踏み直して良い。」と言っている。
ただし、多くの学者はそう思っていない。
なぜなら、ベートーベンは他のソナタでも、特別な色彩効果を出すために、和音を混ぜるからだ。
それは、殆ど印象派の音楽のような音色作りだ。
その当時のピアノは、現代のピアノような音色を持っていなかったのを忘れてはならない。
ベートーベンはこのペダリングによって特別な空気感を作り出そうとしていた、という事を疑う人はそうはいないと思う。
「月光」ソナタは明らかにロマン派音楽の先駆で、1楽章全体が一つのムードで終始し、第1、第2主題の対比はそのムード内に納めて対象的にはせず、長いフレーズで音楽を作っている。
それを念頭に、人々はそれぞれ違う方法でペダルの問題を解決しようとしている。
そのいくつかを紹介する。
《提案1》
チャールズ・ローズン(Charles Rosen:アメリカの音楽学者。音大の教科書になる様な本を多く執筆した。)は、和声が変る2拍後でペダルを踏み直す事を勧めている。
これによって、一瞬は混ざった響きがし、その後濁りがなくなる。
(演奏@1:07:00)
《提案2》
ハワード・ファーガソン(Howard Ferguson:イギリスの作曲家、ピアニスト、音楽学者)は、演奏を始める前に最初の和音を音をさせずに押して、ソステヌート・ペダルを踏んで、その音を響かせ続けて、ダンパーペダルは普通の方法で弾くのを提案している。
これによって、終始少し音が混ざっている響きがする。
(演奏@1:07:37)
《提案3》
他の人達は、和声が変わる所で、ダンパーペダルを半分だけ踏み変えて、半分は音を残す、というペダルを推奨する。
時々少しだけ踏み替える事で、ある程度は響きがきれいになるが、ある程度混ざった音が残り続ける。
(演奏@1:08:19)
3つのどの方法も、試してみる価値がありますね!
今までのどのテーマも大事ですが、「ペダルの読み方」は特に大事なテーマかと思います。踏み方によって全く違う効果(?)になってしまいますから・・・まずは書いてある通りに踏んでみて、ベートーベンの意図を想像してみるのは大事かと思います。
その当時のペダルの概念について触れた、以下の記事も参考にどうぞ。
長くなってきたので、続きは次回に。