前回お話しした難聴の生徒、パトリシアがピアノの先生になったお話を書きたいと思います。
彼女が補聴器を付けるに至った経緯、付けた後の苦労したお話は
【脳科学x音楽xピアノ:育脳ピアノ🎹レッスンの教科書】 第2回目のセミナーを受講された方はもうお気づきかもしれませんが、パトリシアはその中でお話しさせて頂いた生徒です。
彼女の夢はピアノの先生になる事でした。大学在学中からそのために積極的に勉強を重ね、4年生の時にピアノを教え始めました。
その頃のことです。
私の大人のピアノの生徒の方から、自分の孫がピアノを習いたいので先生を紹介してほしいと言われました。そのお孫さんは先天性重度難聴で殆ど聞こえませんでした。おばあちゃんである私の生徒さんは、それが分かった時からお孫さんの将来をとても心配してお話をしてくださっていました。そのお孫さんは、確か2歳頃に人工内耳(コクレア・インプラント)を埋め込む手術をしたと思います。
人工内耳とは、外耳、中耳を飛び越して内耳の蝸牛に電極を接触させ、蝸牛の代わりに音を電気信号に変換し、直接神経を刺激して脳へ電気信号を送る装置で、聴神経を適切な信号で直接刺激することで、脳で環境音や音声、言葉を感じることができるそうです。
そのインプラント手術の後、そのお孫さんが音楽に合わせてハミングしたり体を動かするようになったと、おばあちゃんはとてもうれしそうに話していました。そして小学生になった頃、なんと!自分もおばあちゃんのようにピアノを習いたい、と言い始めたそうなのです。それで近所の先生についていましたが、引っ越されるので、誰か紹介して下さいとのこと。
なんというタイミング!パトリシアしかいないでしょう!?
すぐにレッスンが始まりました。
お孫さんは、パトリシア先生が自分の得意、不得意を良く分かってれるので大好きになり、ピアノも今まで以上に好きになりました!
それからもう数年たちますが、おばあちゃんは今も事あるごとに、どれだけお孫さんがパトリシア先生を好きか、どれだけピアノも上達しているか、本当に嬉しそうに話して下さいます。そのお孫さんが実際どのように音楽を聞いているのかは、私達には分かりません。でも、ピアノによって彼女の人生が豊かになっているのは間違いありません。
パトリシアは自分の経験とハンディキャップが人を助けられたことで、自分自身にもピアノの先生という仕事にも自信がつき、とても成長しました。
卒業後、個人経営の音楽教室で教え始めましたが、今は中心的な仕事まで任されるようになってきています。
パトリシアを連れて、ロイヤル・コンサバトリー・グレード試験の講習会に参加
パトリシア先生と生徒達
楽器店の合同発表会の後で
私達の脳は、生まれながらにして音楽を聞く力が備わっています。新生児でも和音を判別できるくらい、精巧に創られているのです。
(このことは【脳科学x音楽xピアノ:育脳ピアノ🎹レッスンの教科書】の最終回でお話しします。)
耳が聞こえなくてもその素晴らしい機能は脳に備わっています。
また子供は誰でも音楽が好きです。
大人は子供達の脳の音楽性を引き出してあげる責任を担っているのではないでしょうか。
全ての子供達に音楽の楽しさが届きますように。


