今日は難聴のピアノの生徒達について書きたいと思います。

 

私はバイオラ大学で30年ピアノを教えています。

 

 

今まで難聴の生徒を二人教えました。

 

一人目の生徒はアメリカ人のミシェル。

 

リベラルアーツ専攻でピアノを専門に選び、私の生徒となりました。

 

アメリカではハンディキャップへの支援が充実しているので、ミシェルも乳児期に難聴が分かった時点で補聴器の助成を受け、幼児期以後はスピーチ・パソロジー(言語療法)の専門家によって、唇の動きで言葉を理解できるように訓練を受けていました。補聴器で補えない情報は口を見て得ていたのです。

 

でも私は教室中を歩きながら話してしまう傾向があり・・・ミシェルは聞こえない・・・それで私は、動かず、いつも彼女の方を向いて口をはっきり動かしてゆっくり話す、という訓練をさせられました。

 

ミシェルはとても音楽的に表現ができる学生でした。理解も早いし、深い。頭も良い!成績優秀な学生が入れる特別コースに在籍していました。

 

でも速い曲が弾けない。どうも補聴器では速い音の一つ一つが明確に正確に脳に伝わらないらしい。ピアノは音を聞きながら弾くので、脳が高速の音処理ができにくい結果、速く指を動かせないようでした。耳と脳が慣れるまで時間がかかりました。

 

ミシェルはピアノだけでなく、ビオラも弾けて、アンサンブルの経験もありました。

 

でも、伴奏が困りました!高音域は良く聞こえるのに、中音域(人の声の音域)の伴奏をすると、自分のピアノの音とソロの音が混じって、区別して聞こえにくくなる。バイオリンの伴奏は高音域だから簡単なのに、ビオラや歌の伴奏がとても難しかった。これは解決が難しかった・・・

 

私はミシェルは将来音楽関係の仕事に就かない方が良いのではないか、と思いました。

 

でも彼女は、子供が好きだからピアノを教えたいと言い、卒業後、ある小学校でピアノの先生として採用され、家でも教え始めました。

 

今、ミシェルは大活躍中です!時々送ってくれるどの写真を見ても、子供達がみんなとっても良い笑顔で楽しいそうなんです!それを見ただけでも、彼女が良い先生をしているのが伝わってきて、私はとても嬉しくなりました!

 

小学校のレッスン室で

 

 

 

家で教えている生徒達

 

 

 

 

合同ハロウィンパーティー兼発表会

 

 

ミシェルはピアノの先生として成果を上げ、自信が増して、彼女の笑顔も素敵になりました。

 

ピアノの先生のお仕事はAIが取って代わることの出来ない、将来有望な仕事です。

 

ピアノの先生が増えますように。

 

また一人でも多くの子供達がピアノのレッスンを通して多くの恩恵を受けられますように。