30代世帯で年間3.8万円負担増

「5年ルール」にも注意が必要

0.75%への次の利上げはいつ?

 
植田日銀総裁「経済・物価改善続けば利上げ」 - 日本経済新聞
 

30代世帯で年間3万8000円負担増「5年ルール」にも注意が必要…0.75%への次の利上げはいつ?

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日銀が引き上げを決めた新たな政策金利が週明けの27日から適用される。金利水準が0.5%になるのは、2008年10月以来、約16年ぶりだ。

「ここで動かないことにはならない」

日銀が、追加利上げをめぐって大きな判断材料としてきたのが、春闘に向けた賃上げの動きだ。

植田総裁は、金融政策決定会合後の会見で「今年も賃上げを継続するという企業の声が増加しているほか、支店長会議では、継続的な賃上げが必要との認識が、幅広い業種・規模の企業に浸透してきているという報告もあった」として、「昨年に続きしっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した」と説明した。

もうひとつの判断ポイントが、アメリカのトランプ新政権の経済政策の影響だった。

アメリカ経済は「インフレ率が低下するもとで、しっかりしていると評価した」と述べた植田総裁は、「トランプ大統領が就任し、政策の大きな方向性が示されつつあるが、その後も、国際金融資本市場は全体として落ち着いている」との認識を示した。

賃上げが定着方向に向かい、トランプ政権発足後の市場に大きな混乱も見られないことで、環境が整い、今後2%の物価安定目標が持続的に実現する可能性が高まるなかで、「ここで動かないということにはならないのではないか」というのが植田総裁の説明だった。

日銀は、四半期に1度まとめる「経済・物価情勢の展望」も公表した。このなかで、2024年度の消費者物価指数の上昇率の見通しを、2.7%とし、2024年10月時点の2.5%から上方修正したほか、2025年度の見通しは2.4%、2026年度は2.0%と、両方とも1.9%から引き上げた。

植田総裁は、上方修正の要因として「円安に伴う物価の上振れ」をあげ、「過去に比べると、為替変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」との認識を示したが、「(物価上昇に対して金融政策が後手に回る)深刻なビハインド・ザ・カーブ現象が起きているとは、いまのところ、見ていない」とした。

「預金」「変動型ローン」金利引き上げへ

日銀の追加利上げ決定を受け、メガバンク3行は、普通預金金利を0.1%から0.2%に引き上げると発表した。三菱UFJ銀行とみずほ銀行は3月3日から、三井住友銀行は3月17日からの適用だ。

また、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は、住宅ローンの変動型金利の指標となる「短期プライムレート(短プラ)」を、年1.625%から1.875%へと0.25%引き上げるとし、三菱UFJ銀行は、4月1日から変動型の基準金利を見直すと発表した。3月以前に借り入れを行っている人は、6月か7月の返済分から反映される。

ほかの銀行でも、4月1日に基準金利が引き上げられ、既存契約者はおおむね7月返済分から反映されるケースが多いと考えられる。引き上げ幅は、短プラと同様、0.25%になるのではとの見方が出ている。

「5年ルール」に注意が必要

今回の利上げによる預金や住宅ローン金利の上昇がもたらす家計への影響はどうなるだろうか。みずほリサーチ&テクノロジーズが、住宅ローンを借りている世帯に限定して0.5%への利上げの影響を試算した。

平均では、預金金利の増加分が年間約1万2200円となる一方、住宅ローン利払い増によるマイナス分が約2万7600円で、預金でのプラス効果を上回る結果となった。

世帯主の年齢別でみると、若い世代ほどその傾向は顕著で、30代は、預金金利の増加分は約8500円なのに対し、住宅ローンの利払い負担増は約4万6800円で、差し引き3万8000円ほどのマイナスとなる。

40代では、預金金利の増加分が約1万800円、ローン利払い負担増が約3万4900円で、差し引き2万4000円ほどのマイナスだ。

現在、住宅ローンでは「変動型」を選んでいる人が7割を超えているが、「変動型」では、当面の返済額の増加を抑えるため、元利返済額の見直しが5年毎に行われる「5年ルール」が適用されているケースも多い。この場合、金利が上昇しても毎月の元利返済額は5年間は増えないものの、一方で、返済額に占める利息分は大きくなる。

みずほリサーチ&テクノロジーズは、変動型ローンで、5年ルールが適用されている場合の金利上昇時のシミュレーションも行っている。

借入金額3000万円、返済期間35年で、返済2年目に金利が0.35%から0.6%に上昇した場合、元利返済額は、5年目までは、年間91.1万円で変わらないが、そのうちの利息分は1年目に10.4万円だったのが、2年目には17.3万円へと大きく増える。6年目には、返済額が見直されて、元利返済額が年間95.5万円に増え、最終的に、返済期間全体を通じた総利払い額は321万円となり、金利が0.35%のまま上昇しない場合に比べて、133万円増加する結果になった。

変動型には「5年ルール」のほか、返済額を変更するときの増加額を前の5年間の25%までにする「125%ルール」が適用されているケースもある。このようなルールにより、毎月の返済額の当面の上昇や急激なアップは避けられるが、金利上昇が続いていけば元金の返済ペースは落ちていく。こうした点に、より注意が必要な場面になってきた。

0.75%への次の利上げはいつか

今後の焦点は、次の利上げがいつかになるかに移る。市場関係者の多くは、日銀が0.25%幅で追加利上げを進め、次の利上げでは0.75%に引き上げるとみているが、時期については「2025年6~7月ごろ」を予想する声の一方、「秋以降」とする見方もある。

中央銀行が政策金利を動かす際に意識するとされるのが、景気を熱しも冷ましもしない「中立金利」だ。植田総裁は「1~2.5%くらいの間に分布している」とする日銀の分析を紹介したうえで、政策金利を0.5%に引き上げても、「中立金利にはまだ相応の距離がある」と指摘したが、次に0.75%に上げると、計算次第で「中立金利」とみられる水準に差しかかってくる可能性も出てくる。

日銀の政策金利は、過去30年、0.5%を超えたことがない。植田総裁は「少しずつ段階的に動いて行くのが適切な対応だと思っている」と述べたが、30年来の「未体験」ゾーンに、いつ、どのように足を踏み入れるのか。日銀は、物価・賃金情勢を見極めながら、慎重に判断を進めることになる。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

 

政策金利≒0.5%に引き上げ

変動型住宅ローンに影響で

住宅購入検討者へ

「できるだけ繰り上げ返済を」 

企業借金返済

年≒68万円の増か?

 

 

日銀は24日、政策金利を16年ぶりに0.5%程度に引き上げると表明した。日銀の追加利上げを受け、メガバンクは相次いで金利の引き上げを発表。専門家は、輸入物価のインフレ圧力を抑える為替政策や、利上げの適切なタイミングが今後の成長の鍵になると指摘する。

 

 政策金利を16年ぶりに0.5%程度に引き上げると発表した日銀・植田総裁

政策金利引き上げで企業収益圧迫の懸念

日銀が政策金利を0.5%程度に引き上げる、追加利上げに踏み切った。 日銀は24日まで開いていた金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.25%程度から0.5%程度に引き上げることを決めた。政策金利の引き上げは2024年7月以来で、0.5%の金利水準は約16年ぶりだ。 

 

日銀・植田総裁: 

しっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれています。2%物価安定目標の持続的安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整をすることが適切であると判断しました。 

植田総裁は会見で、「経済物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げる」と強調した。 

日銀の追加利上げを受け、メガバンクは相次いで金利の引き上げを発表。三菱UFJ銀行とみずほ銀行は、3月3日から普通預金の金利を現在の0.1%から0.2%へ引き上げると発表した。また、三井住友銀行も3月17日から0.2%へ引き上げる。

 

 預金の利息収入が増える一方で、今回の引き上げで大きく影響を受けるのが住宅ローンだ。金利の引き上げが決まった24日、住宅展示場で家の購入を検討している人たちに話を聞くと――。

 

 変動金利8000万円(40年)・購入検討者(30代): 返す額が額なので気にはしていましたけど、覚悟しないといけないんだろうなっていう。諦めですかね、もう。 

変動金利5400万円(40年)・購入検討者(20代): 上がるだろうとは思っていたので、しょうがないのかなという感じです。 

購入検討者(20代・30代): できるだけ繰り上げ返済をたくさんして、金利が安いうちに返したいと思っています。

多くの人が利用する変動型の住宅ローン。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、変動型の住宅ローン金利の目安となる短期プライムレートを0.25%引き上げる。 一方、「日銀の追加利上げが企業に与える影響」について、帝国データバンクが緊急調査したところ、企業が借金返済の際に負担する利息は、1社当たり平均で年間68万円ほど増えるとしている。 これは経常利益を平均2.1%ほど押し下げることになり、黒字から赤字へと転落する企業は、全国で約1700社にのぼるという。

背景に「賃金・物価の好循環」

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。 

 

海老原優香 キャスター: 

松江さんは今回の利上げについて、どのように受け止めていらっしゃいますか。 デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん: 今回は日銀が、「物価と賃金の好循環」による成長が堅調に続いていくとの見通しを持っていることが背景にあると思います。賃金においては、春闘で持続的な賃上げ交渉が続いていく、さらに物価においては、2026年に向けて目標の2%を上回る物価上昇が見通せている。こういった要因が今回の利上げの決定に至ったと思います。とりわけ2025年の経済成長においては、実質賃金がプラスの状況をいかに早く実現できるかが成長の鍵を握ると思います。

輸入物価上昇・為替対応が重要課題

海老原キャスター: そのために日銀は、どのような対応が求められるのでしょうか。 

 

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん: 

日銀は、原材料費などの上昇が伴うようなコストプッシュ型のインフレをいかに適切にコントロールできるかが問われてくると思います。 とりわけ、輸入物価に影響を与える為替動向には注視が必要で、アメリカのトランプ大統領の関税政策によって、アメリカ経済にインフレの上昇圧力が高まり、金利上昇を伴うドル高・円安基調が進行すると、輸入物価のインフレにつながりやすい。ここにおいて対応が重要になってくると思います。 これから日銀はグローバル経済の不確実性に備えながらも、適切なタイミングで利上げをすることによって、“脱デフレのニューノーマル”とも言える、日本経済の新たな成長ステージを後押しするような展開に期待したいと思います。 

 

海老原キャスター: 変動型の住宅ローンなどの基準金利は4月に引き上げられるとすると、概ね7月の返済分から、新たな利率が適用されるケースが多くなりそうだという。

 

 

高橋洋一氏 

追加利上げのカラクリを解説

変動金利の人は、お気の毒 ...

 
高橋洋一内閣官房参与が退職 「さざ波」「屁みたいな」投稿で ...
 

 

 

元内閣官房参与で経済学者の高橋洋一氏が27日、「上泉雄一のええなぁ!」(MBSラジオ)に出演し、日銀の追加利上げついて言及した。

日銀は24日に行われた政策金利決定会合で、昨年7月以来の追加利上げを決定した。銀行間で短期資金をやりとりする金利の誘導目標を0・25%から0・5%程度に引き上げる。政策金利が0・5%の水準になるのは、2008年10月以来およそ17年ぶりだ。

「まったくホントにふざけたことやりあがって。やっていいか、悪いかって言ったら悪いですよ」と憤慨した様子の高橋氏は、続けて「普通の政権だったら『ちょっと待って』と言いますよ。全然上げる理由なんかないから。植田総裁が理由を説明しないからビックリしました」

同時に日銀は、経済の中長期の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で25年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)上昇率の見通しを前年度比2・4%と発表した。

利上げ理由がないことについて「消費者物価全体は3・6%上がったんですけど、でも、生鮮食品は3・0%。エネルギーは2・4%になってる。普通はエネルギーと食品を除いた数字を基調と見るんで、そうすると2・4%って全然悪い数字じゃない。なんで上げるのか…。こんないい数字なのに利上げしたら後で景気悪くなりますよ」と危機感を募らせた。

さらに「預金金利の方は、普通預金で0・1%しか上がらないと思う。せこいんですよ。差額はみんな銀行が儲けてるんですよ」とぶっちゃけた。今後、住宅ローン金利などに影響が及ぶとし「変動金利にしている人は、お気の毒さまですけどね。短期金利と連動して上がるんで、(住宅ローンの返済額も)上がるでしょうね」とコメントした。最後に「(日銀の政策決定会合が)あと7回あるんで、そのうち2回くらい(利上げ発表を)やりたいんじゃないですかね」と言い、さらなる利上げを予測していた。

 

 

 

【画像】今回の利上げによる預金や住宅ローン金利の上昇がもたらす家計への影響をチェック

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