チューリップのアップリケ 

うちがなんぼ早よ 起きても
お父ちゃんはもう 靴トントンたたいてはる
あんまりうちのこと かもてくれはらへん
うちのお母ちゃん 何処に行ってしもたのん
 

うちの服を 早よう持ってきてか
前は学校へ そっと逢いにきてくれたのに
もうおじいちゃんが 死んださかいに
だれもお母ちゃん 怒らはらへんで
 

早よう帰って来てか
スカートがほしいさかいに
チューリップのアップリケ 

ついたスカート持って来て
お父ちゃんも時々 買うてくれはるけど
うち やっぱり お母ちゃんに買うてほし
うち やっぱり お母ちゃんに買うてほし ...

うちのお父ちゃん 暗いうちから遅うまで
毎日靴を トントンたたいてはる
あんな一生懸命 働いてはるのに
なんでうちの家 いつも金がないんやろ
みんな貧乏が みんな貧乏が悪いんや
そやで お母ちゃん 家を出て行かはった
おじいちゃんにお金のことで
いつも大きな声で 怒られてはったもん
 

みんな貧乏のせいや
お母ちゃん ちっとも悪うない
チューリップのアップリケ
ついたスカート持って来て
お父ちゃんも時  買うてくれはるけど
うち やっぱり お母ちゃんに買うてほし
うち やっぱり お母ちゃんに買うてほし ...

岡林信康

 

 

 

 

 

 

手紙

私の好きな みつるさんが 

おじいさんから お店をもらい
ふたり いっしょに 暮らすんだと
うれしそうに 話してたけど
私といっしょに なるのだったら
お店をゆずらないと 言われたの
お店をゆずらないと 言われたの ...
 

私は彼の 幸せのため
身を引こうと 思ってます
ふたりは一緒に なれないのなら
死のうとまで 彼は言った
だからすべてを 彼にあげたこと
くやんではいない 別れても
くやんではいない 別れても

もしも差別がなかったら 好きな人とお店が持てた
部落に生まれた そのことの
どこが悪い どこが違う
暗い手紙に なりました
だけど私は 書きたかった
だけど私は 書きたかった ...

岡林信康

 

 

 

 

 

 

 

山谷ブルース

今日の仕事はつらかった       
あとは焼酎をあおるだけ
どうせ どうせ 山谷のドヤ住い    
ほかに やることありゃしねえ

 

ひとり 酒場で飲む酒に        
帰らぬ昔がなつかしい
泣いて 泣いてみたって なんになる  
いまじゃぁ 山谷がふるさとよ

工事終れば それっきり       
おはらい箱の俺たちさ
いいさ いいさ 山谷の立ちん坊    
世間 恨んでなんになる

 

人は山谷を悪くいう        
だけど俺たちいなくなりゃ
ビルもぉ ビルも道路もできゃしねえ  
だれも わかっちゃくれねえか

だけど 俺たちゃ 泣かないぜ     
働く俺たちの世の中が
きっと きっと 来るさ そのうちに   
その日にゃ 泣こうぜ うれし泣き

岡林信康

 

 

 

 

 

 

 

フォークの神様 岡林信康の「私的」三部作

久々 ... 。沁みる ... 。

社会の暗部、弱者に向けた、やさしい歌。山谷ブルース以外は一時?放送禁止歌となった。両者とも部落問題を描いたものだ。日本の文化、意識の低さを感じてならない。山谷ブルースは、兄貴がギターの弾き語りでよく歌ってた。部落問題と言えば、小説(映画でも)では、島崎藤村の名作「破戒」、住井すゑの「橋のない川」が忘れられない。後者の長編小説は、バイクで大けがを負い、約五か月に及んだ入院生活の折、義姉が全七巻を差し入れてくれたっけ。

あれから、何年が過ぎたのか ... 。

新たな貧困問題が社会を覆っている。差別も、目に見えぬだけで、本質は変わっていない気がする。前にも書いたが、山谷は一度も訪れたことがないので、泊りがけで、この目で見てみたい。「あしたのジョー」の舞台でもある。

 

 

 出自を隠して、生きる苦しみ

 

 

 「橋のない川」の舞台

 

 

 日本三大ドヤ街 山谷の現在の街並み

 

 

 あしたのジョー 尾藤イサオ