子育てと介護“ダブルケア”の実態
「離乳食と介護食を同時に作っていた」
「子どもの夜泣きと介護のトイレ介助が重なり睡眠時間がなかった」
「どちらも十分にできない自分を責めた」
子どもを育てながら、親などの介護も行う『ダブルケア』を行う人の声です。
今、高齢化や晩婚化を背景に、ダブルケアの状況にある人が増えていると指摘されていて、内閣府が行った調査では、2016年の時点で全国で25万人余りに上ると推計されています。山梨県内でも相談先がなく周囲から孤立し、支援が届いていない状況などが明らかになってきました。(木原規衣記者)
両立は難しい

県内に住む久美子さん(仮名)は小学校5年生と3年生の子どもを育てるシングルマザーです。実家の両親の介護と子育てのダブルケアを続けています。

令和3年、70代の母親が脳梗塞で倒れ入院。「要介護2」になり、つえがないと歩けなくなりました。

80代の父親のけがも重なり、実家には介護用のベッドを2つ並べています。

ケアマネージャーにも相談しましたが、両親は年金暮らしで、介護は知らない人ではなく娘に任せたいという希望があるため、デイサービスやホームヘルパーを利用することは難しく、フルタイムで働く久美子さんが週に3日ほど実家に通い、食事や洗濯など身の回りの世話をしています。

久美子さんは週末には両親のための食料品や日用品の買い物や夕食の準備のほか、子どもの習い事の送り迎えもしているといいます。
久美子さん(仮名)
「仕事が終わって、学童に迎えに行って買い物をして実家のほうに来て、自宅の方でも自分の家の洗濯とか、翌日の学校の準備とか。自分の就寝時間が結構遅くなっちゃったりとか。自分の時間も本当になくて、自分があと何人か欲しいなっていう気持ちです」

特に大変だったのは、母親が入院していた2年前。母親の病院におむつを届ける傍ら毎日実家に通い父親の食事の準備。自宅に帰っても子どもの宿題を見る時間もなく、巧く両立ができないことで思い詰めて了ったと言います。
久美子さん(仮名)
「子どもに集中できなかったりとか、見てあげられていないところもあったり、親も親でやっぱり本当はもっとつきっきりで介護してあげたい部分が子どもの方にかかっちゃうから、できていなかったり。ダブルで来るってなると、本当に私も2年前は死ぬんじゃないかなって思うぐらい精神的にも、体もきつくて」

久美子さんは、こうした状況がいつまで続くか分からないという不安を今も抱えていますが、だれにも相談できずにいるといいます。

久美子さん(仮名)
「私もどういうふうに説明していいかも分からなかったですし、相談できる場所が分からなかったので、1人で全部抱え込んでいるような状態でした。ダブルケアについて相談するところが自治体にもあったらいいなっていうことと、気軽に相談できる場所があったらいいな」
「精神的負担」9割超

甲州市の地域子育て支援センターを運営するNPO法人は、ことし2月から3月にかけて県内の子育て世帯を対象にダブルケアについてアンケートを行い、110人から回答がありました。

それによりますと、現在ダブルケアをしている人が22人(20%)、過去にダブルケアをしていた人が15人(13%)と、ダブルケアを経験している人が3割を超えました。

そして、ダブルケアの経験者に子育てと介護のどちらの負担が大きいか聞いたところ、半数近くが子育てよりも介護を負担に感じていると回答しました。

また、現在ダブルケアをしている人にその負担について複数回答で聞いたところ、「精神的な負担」が9割近く(86.4%)、次いで「育児や介護のスケジュールが重なる」(54.5%)、「自分の心身を十分ケアできない」(50%)などとなりました。精神的な負担が大きい理由の1つに、多くの自治体では、子育てと介護の問題を扱う窓口が分かれているため、総合的に相談できる場所がないという声もありました。

さらに、アンケートでは、拡充してほしい支援について、子育てと介護費用の負担軽減や、緊急時の子どもや要介護者の預け先などを望む声が多くを占めました。

アンケートを行った NPO法人すてっぷ・あっぷる 塚田純子 さん
「子どもにしわ寄せがいってしまうとか、どちらも十分にできなくて罪悪感を感じるとか。実際にはまだまだたくさんいらっしゃると思いますし、なかなかそれを表に言えないという感じも見受けられました。必要な時に必要なもの、必要な手助けが差し伸べられるという、もっと柔軟なかたちで家族全体を支える枠組みができたらいい」
支援の動きも

アンケートを行った甲州市のNPO法人は4月に、南アルプス市や笛吹市などの子育て支援団体などと協力して具体的な支援を検討する会議を開きました。
この中では、NPO法人が運営する子育て支援センターで行う一時預かりのサービスを親が自分の休養のために使ってもいいと周知することになったほか、今後に向けて介護のケアマネージャーのように子育てにも家庭ごとの支援の担当者を設けることや、里親制度を活用して緊急時の子どもの預け先をつくることなどのアイデアが出されました。
NPO法人では今後、行政にも必要な支援の体制づくりを働きかけていきたいとしています。

甲斐性なしだった親父は、認知症のおふくろをひとりで看取ってくれた。その後は、俺と兄夫婦に迷惑を掛けまい、だったのか、最後まで独り暮しを続け、自分で自分のケツを拭いて、九十才手前で逝った。女房から聞いたのだが、「子孝行」という言葉もあるらしい。両親は正にそれだった。
一番親しくしている友人は、一昨年ずっとアルツハイマー型認知症で、施設療養していた母親を見送り、今は、90代の親父を抱えている。気になってはいるが、プライドの高い彼には、その手の話はタブーで傍観せざるを得ない。今回の年賀状では、本年を以て年賀状を閉じると伝えてきた。
定年後の第二の人生ということで、新たな彼との交わりができるとずっと楽しみにしてきたのだが、温度差を感じざるを得ず、益々疎遠になっていく状況が切ない。
