右翼も左翼も敵も味方も関係ない!

異端の政治活動家、鈴木邦男の死を偲んで

 
 

 

 

 

「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」より

 今年1月、政治活動家、鈴木邦男氏の訃報が伝えられた。各メディアが報じていたので、そのニュースに触れた人も多いのではないだろうか?

ご存知の方も多いと思うが、鈴木邦男は、新右翼団体『一水会』元顧問。ただ、時代が変化したのか、国家・政治が変わったのか、いつからか彼は左翼、右翼にとらわれない民族派リベラリストと呼ばれるようになっていた。

それほど彼は右翼も左翼も関係ない、さまざまな立場の人間と交流をもち、さまざまな意見に耳を傾けた。自分の主義主張だけを振りかざして、ほかの意見には一切耳を傾けない。そういう人物ではなかった。いまから3年前に公開された中村真夕監督のドキュメンタリー映画「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」は、その鈴木の半生と人間性に迫った。亡くなったいまとなっては、鈴木の晩年を知ることができる貴重な記録といえる。

そして、そこには、彼の「遺言」ともいうべき言葉の数々が収められている。

 

 その残された言葉は、不誠実で不寛容ないまこそ響いてくるところがある。

 

 追悼の声が集まりアンコール上映が決定した本作について、改めて中村真夕監督に訊く。(全四回)

 

おかげさまで危惧するような出来事はありませんでした

 前回(第一回はこちら)に続き、ドキュメンタリー映画「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」の今回のアンコール上映についての話を続ける。少し話を戻すと、3年前の劇場公開時のインタビュー(※2020年のインタビューはこちら)で、中村監督はひとつ危惧していたことがあった。それは、鈴木氏を前面に出したドキュメンタリー映画ということで、上映を快く思わない人々からネットを中心に叩かれないかということだった。

 

 実際はどうだったのだろうか?

 

「取り越し苦労に終わってくれたといいますか。

公開前はいろいろと心配していたんですけど、おかげさまで危惧するような出来事はありませんでした。 誹謗中傷するようなネットの書き込みもほとんどありませんでした。むしろ応援してくれる方の声が多く届きました。当初の予想と違ったので、わたしとしては『あれっ?』といった感じでしたね。ただ、いま考えると、この上映時の反応も、鈴木さんの人柄を表しているといいますか。鈴木さんをいろいろと批判する人は確かにいました。

けど、その人たちも鈴木さんの存在は認めていた。鈴木さんの主義主張や意見と食い違っても、鈴木さんの人間性や人格を悪くいう人は誰もいなか敵からも味方からも、ひとりの人として鈴木さんは愛されていた。だから、上映でなにかトラブルは起きることがなかったです。鈴木さんの人柄もあって、何事もない上映になった気がします」

 

わたしにとっては、コロナ禍の前の最後の日常だった

 2020年の「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」の公開は、思い出深いものとしていまも心に刻まれているという。

「前にも触れたように世の中がコロナ禍に入る直前のことで、ありがたいことに多くの方がいらっしゃってくれてトークイベントにも参加してくださった。まさか、その後、映画館が閉まってしまうとか、まったく考えていなかった。鈴木さんとお会いするのも、このときが最後になるとは思っていなかった。また、わたしにとっては、コロナ禍の前の最後の日常だったといいますか。コロナ禍前、自由に集って誰かと対面で語らうことができた場が『愛国者に気をつけろ!鈴木邦男』のトークイベントだった。いま、コロナ禍が過ぎつつありますけど、でも、コロナ禍の前の日常とはどこか違う。だから、わたしの中で、(『愛国者に気をつけろ!鈴木邦男』の上映は)コロナ禍になる前の日常として、よけいに思い出深いものとして記憶されています」

鈴木邦男氏本人の映画の感想は?

 では、鈴木邦男氏本人は、「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」にどんな感想を抱いていたのだろか?

けっこうみなさんから、その質問は受けるんです。『この映画についての感想を鈴木さんから聞きましたか?』と。

わたしも聞いているんです。本人に『どうでしたか?』と。でも、口を濁すというか、明快な答えは返ってこないというか、何も言ってくれないんです。

 

 いま公開している『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』のナオトさんも同じなんですけど、感想を聞いても気恥ずかしいのか、なんなのかよくわからないんですけど、話をはぐらかせる感じで何も感想をいってくれない(苦笑)。なので、残念なんですけど、鈴木さんがこの作品のことをどう思っていたかは、ほんとうのところはわからないです。ただ、上映後のトークゲストの相談をしたときに、鈴木さんにゲストの候補を何人かお渡しして、『鈴木さんが(最後に)お会いしたい人はいますか?』という感じで聞いたんです。

 

 もちろん『最後に』とは言いませんでしたが、撮影中から転倒を繰り返していて、どこかご本人も周りのわたしたちも、『もしかしたらこの機会が最後かもしれない」という覚悟があった気がします。なので、できるだけ鈴木さんが会いたい人に会わせてあげたいという思いがありました。それで内田樹さん、金平茂紀さん、白井聡さん、松本麗華さん、雨宮処凛さん、足立正生さん、香山リカさん、上祐史浩さん、武田砂鉄さん、松元ヒロさんなど、多様なゲストの方々が『鈴木さんのため』ならとお越しくださいました。

 

 この顔ぶれを見ても、鈴木さんがどれだけ幅広い人たちに尊敬され、愛されてきたかが伝わるかと思います。

そして、鈴木さんはみなさんとお話することができた。ですから、映画の感想はさておき、映画が公開されたことは喜んでくれたのかなとは思っています」

 

 

 

 

「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」

監督:中村真夕

出演:鈴木邦男、雨宮処凛、蓮池透、足立正生、木村三浩、松本麗華、上祐史浩

公式サイト:http://kuniosuzuki.com/

大阪・第七藝術劇場にて4月15日(土)~、

横浜シネマリンにて4月29日(土)~上映

写真はすべて(C)オンファロスピクチャーズ/シグロ

 

水上賢治

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

 

 

 

 

コント集団 ニュースペーパーのライブでもゲスト出演で何度かお見かけした。

温和な感じの印象、ソフトな語り口、右翼というイメージとはかけ離れていた。右翼であれ、左翼であれ、やはり嘘のない「一所懸命さ」に対しては畏敬の念を抱く。

先だって、横浜のジャックアンドベティで観たドキュメンタリー映画「妖怪の孫」にも、一水会の幹部がインタビューの形で登場していた。それにしても安倍はクソだ。知れば知るほど、その思いは強くなる。今のクソ社会にした

元凶の一人。マスコミを牛耳り、ネットをフル活用して「政治は『国民にやってる感を如何に印象づけるか』、印象操作が大事」みたいな政治屋。悪いことしまくり、噓つきまくり、国民=愚民と捉えてなめ切っている。

 


 

"日本の真の影"に切り込む政治ミステリー劇場

安倍晋三とはいったい何者であったのか。

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あなたも妖術に侵されてませんか?

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(C)2023「妖怪の孫」製作委員会