暑中見舞い

こんなに遠くの海に来ています

こんなに遠くの海に来ています

彼女は鼻の頭まで皮がむけて

おまけに化粧もしてないけど

とってもよく笑うんです

暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

 

君と幸子さんも元気ですか?

愛するところは君のアパートですか?

公園は妙に薄暗く秘密めいてて

おまけにだれかにどこかで見られてるみたいで嫌ですね

暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

 

陰口言ってるひともいるでしょうね

長い休暇を取りました

休んでいると落ち着かないってのは

知らぬうちに病んでるんですね

もっときれいになりたいんです

暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

 

こどものように笑えないけれど

なにも考えず駆けて叫んでそれから跳んで

なにも考えず なにも考えず

きれいに笑っていたいんです

暑中お見舞い申し上げます

暑中お見舞い申し上げます

 吉田拓郎

 

 

 

 
 
 

 

 
蒼い夏
浜日傘 ゆらゆら
すらりとのびた 長い脚
蒼い夏が 駆けてゆく
ぼくは昼寝を口実に
泳げないのを幸いに
女の子って やっぱりいいな


裸の子 じゃぶじゃぶ
おちんちんさえかわいくて
蒼い夏が はしゃいでる
きみは夏みかん むきながら
早く子供が欲しいなぁ
わざと言って 溜息ひとつ


盂蘭盆会ちらちら
燈籠流し 水明り
蒼い夏に 祈りあり
いつか亡びる この海が
肌をじりじりこがすので
今夜きっと寝つかれぬでしょう


老夫婦 はらはら
過ごした日々が朽ちてゆく
蒼い夏に 淋しさあり
ぼくは平凡な愛妻家
もうなにも考えまい
愛することの わずらわしささえ
 吉田拓郎           
 

 

◇ちょっと前まで確かにあった日本の夏の海辺の風景。

  「浜ひがさゆらゆら」がいいよな。日本的なこの響き!

 

 



 

せんこう花火

せんこう花火が ほしいんです
海へ行こうと 思います
だれか せんこう花火をください
ひとりぼっちの私に
 

風が 吹いていました
ひとりで 歩いていました
死に忘れたトンボが 一匹
石ころに つまづきました
 

なんでもないのに 泣きました          
 

海に癒しを求めたのか?
「死」を思っての「海行き」なのか?
せんこう花火とトンボと私とが重なる・・。
 吉田拓郎