「あっ、私。ナミ。今日いる?ちょっと寄りたい




なと思って。うん。じゃあ今から行くから、




30分くらいで着くと思う。」







自営で事務所を行き来する両親に電話した。




死神のお兄さんは静かに車のバックシートから




こちらを見ていた。




どうしよう。私、親より先に死んじゃうんだな。




結婚もしないで、ろくに親孝行もせずに




もっと頻繁に会いに行けばよかった。




だけど行って近況を言えば、ダメ出しされたり、




親戚の娘さんは結婚しただの、親に旅行を




プレゼントしただの、耳の痛い話しを聞かされ




るのが面白くなくて、つい会いに行く回数が




減っていた。





またいつでも会えるからって、そう思ってた。





そりゃあ白髪やシワが増えてきた両親には




気づいていたけどまだまだ2人とも50代。




私だって結婚もこれからで、漠然と




いつかは家族を作って、子供が出来て




両親をおじいちゃんやおばあちゃんに




したいって思ってた。





‥‥‥なのに。





「ナミさん‥‥‥。」





いつの間にか涙が伝っては流れ‥‥。





死神のお兄さんがそっと手を差し出して




頬の涙拭ってくれていた。




「あっ‥‥‥。わ、わたし‥‥。」さらに涙が



とめどなく流れて。




「ナミさん、車止めて。」





お兄さんに言われるまま、慌てて路肩に車を




止めた。




ふぅっ。ハンドルに頭を預けて声を上げて泣いた




背中には暖かい手。黙ってさすっていてくれた。




死神って‥‥優しい人?なんだな。






「うっうっうっ‥‥‥。」落ち着こうとしても



嗚咽が止まらない。




いつの間にか前の座席に現れていた死神さんに






柔らかく抱きしめられていた‥‥‥。






ギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザ





両親の存在は私の中で大きいです。




良くも悪くも。死んだからって絆は消えない




ような気がします。




また生まれ変わったとしても近しい関係に




なるような‥‥‥。