今私は職場に来ている。


本当は今日休みをとっていたけど、


少し残した仕事を片付けに。


隣の席には仲良しで3歳下の静ちゃん。


「今日の予定よかったんですか?久しぶりの


年休だったんじゃ?


「うん。これしたら帰るから。


‥‥‥。静ちゃん。」



「何ですか?」



「えっと、‥‥‥。あの。」



静ちゃんが手を止めて、首を傾げる。




「あの‥‥‥‥。あっそうだ、これ。



この本たち、良かったらあげる。



静ちゃん、もうここ5年目だから、資格とる


講習受けれるもんね。


この本良かったら使って。」



「えっ?いいんですか?ありがとうございます。



水貝さん時々まだ使ってたじゃないですか?」



「あっ、うん。でも‥‥。大丈夫。もう殆ど



頭に入ったし、少し整頓しようと思ってたから。



この資格はここで仕事するなら、絶対あって



損はないよ。良かったら使ってよ。」




「‥‥‥。そうですか?じゃあ、貸してもらおうかな?」



「いいよ。あげるって。ゆっくり勉強して。



ねっ?」




私はにっこり微笑んで本を差し出す。



静ちゃんも笑顔で受け取ってくれた。



静ちゃん、今までありがとう。



可愛いくて、オシャレで、仕事も一生懸命で



みんなのアイドルなのに、



私のこと、とても慕ってくれて嬉しかったよ。







この職場ともお別れなんだね。


新採の頃からたくさん思い出があるなぁ。



課長さんは3回変わって、今の課長さんは



スマートでカッコ良かった。



この職場の雰囲気が好きだった。



私のもう一つの居場所だったなぁ。




私はぐるりと事務所を見回して、



最後に引き出しからストラップを取り出す。




ブルーのイルカのストラップ。



隣の課の大橋さんのくれたお土産‥‥。



そっとポケットにしまって席を立つ。



「あっ、帰るんですか?お疲れ様でした。」




「うん。行くね。あの‥‥、大橋さんって今日



お休み?」




「あぁ、今日はみえてましたけど、スーツ


着てたから、出張みたいですよ。何か?」



「ううん。別に。‥‥‥。あっそれじゃあ行くね。



静ちゃん、勉強頑張って。きっとここのエースに



なるよ。大変なこともあるけど、やりがいのある



仕事だよ。‥‥‥。それじゃあ‥‥ね。」



自分の言葉なのに、ぼんやり聞いてる感じ。



上手くは笑えてないだろうな。




肩に触れられて、後ろを振り返ると



死神のお兄さんがふんわり笑いかけている。



分かってる‥‥。



もう行くよ。





11時50分。




わたしは名残惜しく席を立った。









長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1長音記号1





もう更新しないかと思いましたが、



更新した自分に驚きです。



やっぱり仕事は片付けとかないとですね。



今日死ぬって分かってても



特別な事って出来ないのかも。



やっぱりいつもの一日を丁寧に生きるんじゃ



ないかなっと。