朝8時前。



「お願い。電話出て。」




もう仕事に行ってしまった?




友人のマミは看護師。仕事中は携帯を持たない。




ツーツーツー‥‥‥。





やっぱりもう仕事かな?





プツッ。





「もしもし?藤田ですけど。」





「あっ‥‥‥私、私ナミ。水貝ナミ。
 久しぶり‼︎」






「ナミちゃん?」






「うん。」







「えっ。あっ。久しぶり‼︎どうしたの?」






「あっなんか久しぶりに会いたくなって。
もし良かったら、今日って会えないかな?」







「あーうん。会いたいね!でもびっくりしちゃった!何年ぶりかな?私子育てや仕事で、いっぱいいっぱいで‥‥‥。あのごめん。今日はこれから
仕事なんだ。だから‥‥、」





「あっそうだよね。ごめん。じゃあ夕方空いてない?少しでいいんだけど。」







「あーごめん。今晩夜勤もあって、ほんと悪いんだけど今日はちょっと‥‥。」







「あっそうか。なら仕方‥‥‥ないね。」






明らかに落胆した声にマミは、





「ほんとごめん。来週ならナミちゃんに都合合わせるよ。いつがいい?」








「‥‥‥‥‥‥。」









「ナミちゃん?」







「‥‥‥‥‥‥‥。」






「ナミ?」








「あっ。ごめん。わかった。また連絡するね。
あの。高校の時、すごく楽しかったね。マミと
部活のソフトボール。私なかなかルール覚えれないし、体力ないし。でもマミがいてくれていつも
助けてくれた。」






「そうだね。楽しかったね‥‥‥。あの、またゆっくり話そうよ。今度。ねっ?また連絡してよ。」






「うん‥‥‥。」




涙が溢れる。だって私には「今度」はないから。




「わかった。そうだね。」





明日死ぬって、言ってはいけないルール。





気配を感じて振り向くと胸のところで両腕を
くんで静かに見守っている死神のお兄さん。






私は分かってる、と言うようにうなずくと
またね、と電話を切った。





膝を折ってゆかにしゃがみ込む。
ポタポタと涙が落ちてくる。







「‥‥‥‥‥‥っく。私普通に話せてたかな?
マミ、変におもったかな?」








「‥‥‥‥‥あなたは上手く言えてたと思いますよ。」








柔らかなお兄さんの笑顔に、






私は泣きながら無理に笑ってみせた。




なんだまだ笑えるんだ、私。











ギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザ













久々に友達の声、聞きたくなりますね。
元気かな?





約束しなくても毎日会えてた日々が懐かしいですね。