「お昼食べてないでしょ?焼きそばしかない
けど、どう?」



とお母さん。



「あ、ありがとう。‥‥‥。」




出来たての焼きそば。お母さんの焼きそばは




野菜たっぷり、牛肉で、お皿の下に卵が



隠れてるボリューミーな焼きそば。



「へへっ。美味しそうだね。いただくね。」



「‥‥‥‥‥で?何かあった?」



ドキッ。




「‥‥‥‥ん?‥‥‥な、なにが?」





「ナミが珍しくウチに来るなんて。




結婚相手でもみつかった?‥‥‥‥んーでも




そんな良い話でもなさそうか。でしょ?」




「そ、そんな訳ないでしょ?何でもないよ。



たまたま年休とれたから、久々に顔見に来ただけ。」




慌てて焼きそばを口に頬張る。





あっ。この味。人生最後のお母さんの料理は




焼きそばか。




「ナミ?‥‥‥‥。何で泣くの?」





ぼたぼたと涙が溢れてる私。




「ん?‥‥‥アレ?おかしいな、私。





この焼きそば、懐かしすぎて泣けちゃうのかも。





なんか私も歳なのかな‥‥‥ハハッ。」





お母さんはジッと私の顔を見てたけど




何も言わずに、そっと手を握ってくれた。




やわらかな、暖かい手。




「バカね。こんな料理で。またいつでも食べに




来たらいいじゃない。お父さんも待ってるよ。」





「そうか、そうだね。‥‥‥‥あっお父さんは?」





「ナミにアイスでも食べさせるって、買い物に




出てったのよ。もう帰ってくるよ。」






「そうなんだ。‥‥‥私、もう子供じゃないのにね。」






いつも優しいお父さん。‥‥‥ごめん。私‥‥‥。







お父さんを待ってる間、少し横になってたら




寝てしまってた。





クーラーの部屋。いい匂いのタオルケットが




かけられてて、うろっとした意識の中で





お父さん、お母さんの声を聞いていた。





「なんか疲れてるみたいね。」





「そうか?ナミも大人なんだから、色々ある



だろうさ。俺たちも歳をとるはずだよな。」





「まあ、そうね」




起き上がって、会話に加わりたいけど、




体が脱力して、起きれない。見守られている




意識の中で、ふか安心していてまた眠っていった




みたい。





‥‥‥‥あっそういえば、死神のお兄さん、





どうしちゃったんだろ?






ギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザギザ





人生最後のお母さんの料理。




きっといつまでも覚えているんだろうな。





私は人生最後にカレーが食べたいです。