長い冬が終わり、小川には雪解け水がこんこんと流れ、木々には薄緑色の葉がつきはじめた頃、一人の青年が馬に乗り草原を疾駆していました。
「兄さんは、大丈夫だろうか。」
彼の進む先には、彼が生まれ育った小さな村がありました。その村からは、何本もの黒い煙が青空に吸い込まれるように登っており、ときおり村人らしき悲鳴が聞こえてきました。
青年は、馬の速度を落とさずに背負っていた小さな剣を抜き、雄たけびを上げて、村の門を駆け抜けました。
ほとんどの家々には、火が放たれ、轟々と燃え盛っており、この村を襲った盗賊達の人影はありませんでした。
残された村人から聞かされました。兄は自ら人質として盗賊に投降したと。
数年たった今でも、行く先々で兄の消息を町人や旅人に聞いて回りますが、何一つ手がかりらしき話を聞くことができませんでした。
いつの日か、青年は兄に再び会うことができるのでしょうか。それとも、もう会うことは、かなわぬ夢なのでしょうか。
