ピッ
ガチャンッ
ピピピピピピ・・・・・・

今日も、家の前の自販機のルーレットの音で目が覚める
毎朝決まった時間に買う人がいるのだ

窓を開けると、風が気持ちいい
最近涼しくなってきた

眠たい目をこすりながらコーヒーを淹れる
氷を取ろうとして、手を止めた
今日からホットにしよう

マグカップからたつ香りの良い湯気を感じながら
ベランダに出る

1LDKの部屋の中で、ベランダが一番好きだ

高い垣根が道からの目隠しになっていて、
庭には大きな桜の木が立っている
ピンクが似合うはずのその木も、今は反対色の緑色

視界いっぱい緑に包まれる

垣根の向こうには小学校があって、
子供たちがキャッキャと登校してくる声が聞こえる
先生らしき人の「おはようございまぁぁす」という
元気な挨拶からは、密かに私も元気をもらっている

今日も誰かが防犯ブザーを暴発した
これもまた一興である


カサカサ、と目の前の桜の木から乾いた音をたてて葉が落ちる

そうか
季節が変わろうとしている

春に引っ越してきた町で、初めての秋を迎えようとしている
目の前の景色は枯れてしまうのかな?

急にさみしい気持ちになり息を吸い込んだその時

あれ?

甘く懐かしい香りにたどり着く

金木犀!!!!

よっしゃ当たりの町や!と心の中でガッツポーズをする
ガッツポーズしながらジャンプすらしていたかもしれない
それくらいワクワクが押し寄せてきた


何かが終わるのは仕方ない
防犯ブザーを鳴らす小学生達もいつかは卒業するのだろう
第三者が登場するルーティーンには、確約なんてない

終わらないで、と願うものもたくさんあるけれど
それが何かの始まりになるかもしれない、と
自分に言い聞かせる

でもやっぱり終わらないで、と思う
そんな2021年初秋