次はセミだ(2) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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・・・前回「ヒラズゲンセイ」について掲載したばかりですが、たいへん重要なことなので少し長くなりますがお付き合いください。

 

《NEWS》2020.7.13丹波新聞より

“赤い珍虫”あらわる「ヒラズゲンセイ」体液には毒あり/兵庫・丹波市

兵庫県丹波市の「丹波の森公苑」で、赤いカミキリムシのような姿をした珍虫「ヒラズゲンセイ」が見つかった。発見者で同公苑職員は、「有毒昆虫と聞く。また、丹波では珍しいとも聞いているので、注意喚起の意味も込めて展示を考えている」と話している。玄関近くの植栽の中で見つけた。「以前、新聞で紹介されている記事を読んでいたので、見つけた瞬間に分かった」と話す。ヒラズゲンセイの近畿地方の生息域を調査している★大阪市立自然史博物館の初宿成彦・主任学芸員によると、温暖化で分布域が北に広がりつつあるという。同博物館が把握している限りでは、丹波市で確認されたのは2017年以来、3例目。同公苑で見つかった個体は、体長約2・5センチで、カミキリムシやクワガタムシのような大あごが目立つオス。ツチハンミョウの仲間で、体液にカンタリジンという毒を含み、人体の柔らかい部分に付着すると水ぶくれができたり、ただれたりするという。初宿主任学芸員は、「触ったら必ずかぶれるわけではなく、毒毛虫や植物のウルシと同程度」と話す。クマバチに寄生し、成虫はクマバチの巣の中に侵入して産卵。かえった幼虫はクマバチが集めた花粉を食べて成長する。  成虫になると何も食べず、栄養は全て幼虫の間に得たもので過ごす。近畿では6月上旬~7月中旬に現れる。オスの大あごは、メスをめぐるオス同士の闘争に使われるという。

★報道によって過剰に反応される方がおられるようですが、被害は、かぶれることがある毛虫や植物のウルシと同程度と考えていただいたらいいと思います。また触ったら必ずかぶれるわけではありません。(2019年7月18日追記)触って指に水ぶくれが出来た事例が実際に発生しています。どうぞご用心ください。(2018年6月14日)大阪市立自然史博物館より

http://www.mus-nh.city.osaka.jp/shiyake/hirazugensei.html

 

・・・この★「過剰な反応」こそ、何事においても★キケンかつ★メイワクですね、ご注意を。それにしても変な名前なので、さらに詳しく調べてみました。

 

 

【平頭芫菁(ヒラズゲンセイ)】

ツチハンミョウ科の昆虫を中国語で★「芫菁」と言います。ゲンセイの仲間は体に★カンタリジンという毒を持っています。ヒメツチハンミョウやマメハンミョウも同様です。

 

《参考》吉峰病院「コスモス新聞第175号」より

https://www.yoshimine.com/newspaper/archive/175.html

●シップ剤について

病院から処方されるシップ剤はいわゆるシップ剤とは違い、経皮吸収消炎剤と言われています。今回はそのシップ剤についての勉強です。薬には①内服薬(口からのむ薬)②注射③外用薬(皮膚や粘膜から吸収させる薬)④坐薬(肛門から入れる)の4種類があります。最近、薬を"必要な時間に必要な量で必要な場所に"届けるシステム-DDS(drugdeliverysystem;薬物送達システム)が注目を集めています。DDSの理想の形が、薬物を皮膚や粘膜から患部に送り届けるシステム-TTS(Transdermaltherapeuticsystem;経皮吸収治療システム)です。TTSの薬─経皮鎮痛消炎薬は、使用が簡単なうえに、体内で一定の薬物量を持続でき、長時間効果が続きます。また、経口薬のように薬物が肝臓を通過しないので、全身的な副作用が少なく、仮に副作用が発現したとしても、はがすだけで早急に対応することができます。さらに、使用する大きさを変えるだけで薬物量のコントロールも容易にできます。喘息、狭心症、高血圧などにも使われています。一般に言われている冷やしたり、温めたりする湿布薬とは違い、投与経路が異なるだけで、内服薬と同じ効能が得られる薬なのです。

昔、ヨーロッパでパンやオートミールに水や牛乳を混ぜ薬草を入れ、身体に塗ったものが★パップと呼ばれるようになりました。パップ剤を辞書でみますと医薬品の粉末と精油成分を含み、湿布に用いる泥状の外用剤。ふつうカオリンパップが用いられる。以前は亜麻仁・芥子泥(かいしでい)・麦などを煮て粥状にしたものが用いられた。また、英和辞典によると「病人や幼児用のお粥」などの意です。紀元前千年頃のバビロニアの粘土板に、Pou1iticeやP1asterの記載がみられます。このことから考えてみますと起源は紀元前ということになります。その後ギリシャ時代にはFomentation、1世紀初頭のアレキサンドリアではCatap1asmsが同義の製剤として登場していたようです。また、詳しく調べてみますと★「キリストの唾」です。新約聖書「ヨハネの福音書」9章の「生まれつきの盲人をいやす」と題する次のくだりで、「イエスは地面に唾をし、唾で土をこねてその人の目にお塗りになった。・・・・・そして言われたシロアムという池に行って洗いなさい」」と記載されています。日本では徳川14代将軍家茂公を治療した★昆虫の湿布剤(芫菁げんぜい湿布剤)で、劇薬に近い、強い刺激作用がありました。胡蝶の夢(司馬遼太郎著)では、蘭方医・松本良順により処方されています。その部分を引用してみます。「良順は浮腫のはなはだしい心臓あたりに湿布することを主張した。(中略)湿布は血行や代謝をさかんにするだけでなく、ときに用いようによっては臓器に有利な刺激を与えることもありうる。」・・・・と書かれています。

 

・・・昔から★「湿布剤」として用いられているようです。

 

 

《参考》シーボルトの治療薬「十八道薬剤」/長崎大学薬学部より

http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/history/research/cp1/siebold_18dou.html

シーボルト来日時にみやげ物と一緒に持ちこんだとされる薬品類。実際に医療に使用するためか、脇荷と呼ばれる個人貿易品(オランダ東インド会社の規則では禁止されていた)であったのかは不明。

●4.利尿剤(尿の出をよくする薬)

蒲列謨(ブレーム、花)、洋花、阿蘭花、商陸(ショウリク、ヤマゴボウの根)、ユニヘルボーム(杜松子及木)、謝亜ユ印(ゼーアユイン、海葱、前出)、コロイスシュステル、的列面底那(テレメンティナ、松ヤニの蒸留油)、酒石酸、テーナロース、志幾答亜利斯(ジギタリス、ゴマノハグサ科植物ジギタリスの葉)、カンタリス(昆虫のハンミョウ)、水楊梅皮(ダイコンソウ)、★芫菁(昆虫のハンミョウ)、鵠泄蛤尓(オッセカル、牛胆)

利尿剤の項に挙げられているジギタリス(志幾答亜利斯)は,シーボルトによりはじめて日本にもたらされた強心利尿薬である。原料植物はヨーロッパ原産の多年草で,現在でもこの葉から抽出される成分はジギタリス製剤として重要なものが多い。当時この薬は,血が濃すぎるのを薄めることにより,のぼせやすい人を治すとされ,シーボルトは鎮静剤として多く使用されていたようであるが、現在のジギタリスの適応症である心不全にも応用している。当時,ヨーロッパでもジギタリスの医薬品としての応用はかなり先駆的なものであった。ジギタリスは毒草であるので服用量に注意が必要であるが,シーボルトはこれを正しく評価して使用していたようである。海葱(カイソウ)は,地中海産ユリ科植物の鱗茎で,これも著明な強心利尿薬である。これは吐剤の項の最後にも見られるが,ジギタリスやヒヨシアムスエキス同様,シーボルトにより初めて日本に紹介された薬のようである。

 

・・・シーボルトは★「利尿剤」として用いたようです。

 

《参考》「メディシン・クエスト」/著:マーク・プロトキン/訳:屋代通子/築地書館

http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN4-8067-1244-2.html

ヒルの唾液から抗凝血剤、サソリ毒から制癌剤、カエルの皮膚からモルヒネにかわる鎮痛剤……母なる自然は35億年以上もの間に、途方もない化合物を生み出してきた。むせかえる熱帯雨林、ほの暗い深海、極北の凍てつく荒野……世界を舞台に繰り広げられる、新薬発見のあくなき探求の旅と古代エジプトから現代アマゾンのシャーマンまでの伝統的な動植物の利用から発見・開発された新薬の歴史とアメリカの著名な民族植物学者が鮮やかに描き出す。

例えば・・(知っていますか?

カエルの皮膚-----エピバチジン------鎮痛剤(ABT-594)

カエル----------セルレイン--------降圧剤

カエル----------バトラコトキシン---局所麻酔・痙攣抑制・不整脈の抑制

サソリ毒-------------------------制癌剤

イモガイ--------ジコノチド--------鎮痛剤

アリ----------------------------関節炎

トラコジラミの血--抗菌物質---------ものもらい・化膿止め

ツチハンミョウ科の甲虫★(ゲンセイ)---カンタリジン----催淫剤

ヒルの唾液-------ヒルディン--------抗凝血剤

ハララカアメリカハブ---------------血圧低下剤(カプトプリル)

カーペットバイパー---ティロフィバン--心臓発作・不安定狭心症

アメリカマムシ----コントートロスタティン----制ガン剤

珊瑚-------------エルーセロビン-----抗癌物質

クローバー--------ディクマロール-----抗凝血剤

熱帯のデイジー(アスピリア)----チアルブリン-----抗生物質・殺菌剤・駆虫剤

糖尿病、エイズ、ガン、結核……難病に有効な新薬を発見・開発する競争が、世界のすみずみを舞台に、今まさに繰り広げられている。ヘビ毒、イモガイ、カエルの皮膚といった天然の産物と先住民の叡智、そしてバイオテクノロジーという一見相反する両者の調和に光をあて、それらが実験室において、すでにどれだけ驚くべき新薬への手がかりを示しているかを丹念に紐解いていく。本書はまた、壮大な歴史ドラマでもある。薬草を求めて異国を旅した古代エジプト人や19世紀のアスピリンの開発まで、時を自在に駆けめぐり、何世紀にもわたって続けられてきた治療薬探求の背景を噛み砕く。近代薬物産業の夜明けを告げたのは一枚の柳の樹皮であり、カビから抽出されたペニシリンが、第二次世界大戦の命運を決したのだった。薬物学、エコロジー、民族植物学、歴史、探検の綾なす新薬発見のあくなき探求の旅を壮大なスケールで描き出す。

 

・・・この本には「催淫剤」として出ています。

 

 

《参考》芫青(ゲンセイ)の毒性/医薬品情報より

http://www.drugsinfo.jp/2007/12/10

対象物:芫青(ゲンセイ)

■青斑猫はカンタリジン1%以内を含有する。

カンタリジン(cantharidin):白色結晶。カンタリスの有効成分で、約0.6%含まれている。

■芫青(ゲンセイ)、英名:spanish fly、ヨーロッパ産カンタリスのことで、基原はアオハンミョウ(青斑猫)、学名:Litta vesicatoria(L.)De Geer(ツチハンミョウ科:Meloidae)である。

■斑猫カンタリス(cantharis英名:cantharide)。日本産のマメハンミョウ(豆斑猫)Epicauta gorhami Marseul、中国産のMylabris phalerata Pallas又はM.cichorii Linné(Meloidae)である。本品を乾燥したものは定量するとき、カンタリジン(C10H12O4:196.21)0.6%以上をを含む。本品は不快な刺激性の臭いがあり、味は僅かに辛い。本品の粉末は皮膚の柔らかい部分又は粘膜に付けば痒くなり、甚だしけば発疱する。★皮膚刺激薬として外用され、毒性が強いため内用されることはない。ヨーロッパ産のものは『芫青』という。

■甲虫目ツチハンミョウ科の昆虫。体長は細長く約20mm。頭部は赤色、前胸、 前翅は黒色で、黄色い縦線がある。大豆の葉などを食害する成虫は、体内に猛毒成分を含有する。昆虫の豆斑猫は、発疱剤として使用されている。カンタリジンは以前、一種の★催淫剤として使われた。しかし、強い刺激作用があり、内服すると腎障害を起こす。豆斑猫は不快臭を持つ灰黒色の甲虫で、皮膚粘膜に付くと痒くなり、赤く腫れて水疱ができる。早朝虫の活動が鈍いときに集めて乾燥し、★生薬として用いられる。

■豆斑猫(Epicauta gorhami Marseul)。日本に分布する昆虫で、乾燥した虫体をカンタリスとして薬用に供されたが、豆斑猫が大豆などの葉を食害し、農薬の影響によって激減し、更に副作用が強いこともあって、現在はあまり使用されない。

■カンタリジンには皮膚刺激作用があり、発毛、発泡の目的で外用され、また、★利尿剤として内服されることもある。

■カンタリスチンキ(cantharidis tincture):カンタリス(粗末)100gをエタノールに溶かし、1000mLとしたチンキ剤で、黄褐色澄明の液。★皮膚の刺激剤で、脱毛症、禿頭に本剤の1%-稀エタノール溶液を塗布する。

■カンタリス軟膏(cantharidis ointment):発疱膏ともいう。皮膚刺激薬。カンタリスにラッカセイ油、蜜鑞、テレビンチナ、クロロホルム、塩酸を配して軟膏としたもの。類緑黄色である。肋膜炎、リウマチ、神経痛に適用する。

■胃腸管から吸収され、皮膚からの吸収はわずか。腎より排泄される。10-30mgは致命的なことがある。

■カンタリジン(ヒト致死量:約30mg)。有毒成分は皮膚からも吸収される。

■経口摂取:口と喉の灼熱感、腹痛、悪心・嘔吐、下痢、吐血、無尿、血尿、遅く弱い脈拍と低血圧症、昏 睡、痙攣が見られる。また呼吸障害で死亡。排尿時の劇痛。腎障害。

■誤飲時、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢等の消化器系症状が発現する。血圧低下、尿毒 症、呼吸不全等を起こし、死亡することがある。

■内服時、尿路を刺激し、男性性器の勃起を促すが、有毒成分が排出される時に腎 臓炎や膀胱炎を誘発し、少量でも反復使用すると慢性中毒の危険がある。

処置

[1] 多量の水で胃洗浄。塩類下剤(油又はアルコールは不可)。

[2]痛みにはモルヒネ15mgを皮下注射。

[3]興奮と痙攣にはジアゼパム5-10mgを緩徐に静注、あるいは筋肉深く注射。

[4]循環器ショックには補液点滴静注。出来れば血管収縮剤。

[5]電解質障害に対して適切な治療[6]食道が酷く侵されたときには、胃洗浄の前にチオペントン静注による麻酔を必要とするかもしれない。

事例 「芫青は、いわばご禁制の薬です。身分も使い途も明らかでない客に、芫青を売ることはご法度なんですよ」「それはどうしてなんです」「芫青は、斑猫ともいう。このうえなく貴重な妙薬として用いられる一方、人の命を奪う恐ろしい毒にもなるのがこの斑猫だ」「芫青とは、斑猫のこと………!」[笹沢佐保:八丁堀・お助け同心秘聞<御定法破り編>-毒薬と小町娘;祥伝社ノン・ポシェット,1997]

■豆斑猫について、薬科学大辞典ではハンミョウ科としているが、他の資料ではツチハンミョウ科とされている。しかし、★有毒の豆斑猫はツチハンミョウ科に属するとするのが正解で、ハンミョウ科に属する斑猫は、有毒昆虫ではないとされている。なお、第七改正日本薬局方解説書に記載されている豆斑猫の形態については、豆斑猫の特徴である頭部の赤について何ら説明が無く「頭部はほぼ心臓形で艶のある灰褐色を呈し………」となっているが、このような外形を持つ豆斑猫がいるのかどうかは、昆虫の専門家ではないので不明である。本文中の豆斑猫の図は描いたものである。

 

【ツチハンミョウ科】保育社「原色日本甲虫図鑑」より

https://japanesebeetles.jimdofree.com/%E4%BF%9D%E8%82%B2%E7%A4%BE-%E5%8E%9F%E8%89%B2%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%94%B2%E8%99%AB%E5%9B%B3%E9%91%91/%E5%8E%9F%E8%89%B2%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%94%B2%E8%99%AB%E5%9B%B3%E9%91%91-iii/%E3%83%84%E3%83%81%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9F%E3%83%A7%E3%82%A6%E7%A7%91/

III-70-411  マメハンミョウ / Epicautagorhami (Marseul)

III-70-412  チョウセンマメハンミョウ / Epicautachinensis taishoensis Lewis

III-70-412  ミドリハンミョウ / Lyttacaraganae Pallas

III-70-412  オオツチハンミョウ / Meloeproscarabaeus sapporensis Kôno

III-70-412  ムラサキオオツチハンミョウ / Meloeviolaceus semenowi Jakovlev

III-70-413  ヒメツチハンミョウ / Meloecoarctatus Motschulsky

III-70-413  メノコツチハンミョウ / Meloemenoko Kôno

III-70-413  キュウシュウツチハンミョウ / Meloeauriculatus Marseul

III-70-413  マルクビツチハンミョウ / Meloecorvinus Marseul

III-70-413  ミヤマツチハンミョウ / Meloebrevicollis Panzer

III-70-414  ヨツボシゲンセイ / Schrotteriapolita (Gebler)

III-70-414  キイロゲンセイ / Zonitisjaponica Pic

III-70-414  ツマグロキゲンセイ基亜種 / Zonitiscothurnata cothurnata Marseul

III-70-414  ツマグロキゲンセイ奄美大島亜種 / Zonitiscothurnata shibatai Y. Kurosawa

III-70-414  オキナワキゲンセイ / Zonitisokinawensis (Miwa)

III-70-414  ヒラズゲンセイ / Cissitescephalotes (Olivier)

 

 

《参考》健康食品辞典より「芫青(げんせい)」

http://tanalog.com/taiseidrug/2012/10.html

中国の各地に分布するツチハンミョウ科のアオハンミョウの一種である緑芫青(Lytta caraganae)の乾燥した全虫を用いる。緑芫青は体長1~2cmくらいの細長い昆虫で、体は緑色あるいは藍緑色で光沢がある。かつて日本薬局方に収載されていたカンタリス(L.vesicatoria)と同属の昆虫であり、中国ではカンタリスのことを洋芫青という。日本ではマメハンミョウ(Epicauta gorhami)をカンタリスの代用品として用いていたが、中国ではマメハンミョウの生薬名を葛上亭長という。その他、ヨコジマハンミョウ(生薬名:斑蝥)、ヒメツチハンミョウ(生薬名:地胆)などのツチハンミョウ科の昆虫もカンタリジンを含み、薬用にされる。

http://kampoguide.com/syoyaku/hanmyo.html

このカンタリジンは、これらの昆虫が外的からの自己防衛のために分泌する刺激性の強い化学物質で、皮膚に付着すると水泡が生じるくらいの炎症を引き起こす。カンタリスは約2cmの金緑色の昆虫で、古代ヨーロッパで薬用昆虫として知られ、水腫や卒中、黄疸の治療、また毒薬として用いられたという。カンタリジンの薬理作用として発疱作用や抗腫瘍作用が知られている。外用では皮膚病や腫瘍の治療、発毛剤として用いる。内服すると利尿作用があり、また尿道を刺激するため催淫剤としても知られている。瘰癧(頸部リンパ腺腫や狂犬病、堕胎などに用いられた。★日本では蘭学の影響で江戸時代以降に芫青を配合した発疱剤が★腐食・排膿薬として皮膚化膿症の治療に用いられた。

 

《農業共済新聞》(2000~2001)連載「虫を食べるはなし」文:梅谷献二

https://www.jataff.jp/konchu/hanasi/index.htm

第14回★毒薬「はんみょうの粉」の正体

昆虫の中には強烈な毒を持つものがあり、それは人類に利用されてきました、たとえば、アフリカのブッシュマンは、ヤドクハムシという有毒の甲虫の蛹をつぶして矢の先に塗って狩猟に使い、また、日本でも時代劇でおなじみの「斑猫の粉」 などは昆虫由来の毒薬として有名でした。甲虫類のツチハンミョウ科の仲間は、成虫の体液に致死量がわずか30ミリグラムという猛毒のカンタリジンという物質を含有し、それは洋の東西を問わず古来毒薬として利用されてきました。本来の「斑猫の粉」の正体はその成虫の乾燥粉末です。中国産のそれはキオビゲンセイという種類で、 乾燥した成虫体に25%ものカンタリジンを含有しています。カンタリジンの用途は毒薬ばかりでなく、おできのウミ出しの刺激発砲剤に多用されているほか、少量を内服(大変危険ですが)すれば催淫や利尿、躁鬱病、性病、知覚麻痺などに効果があるとされています。日本では江戸時代の初期に中国から渡来した「本草綱目」が原典となって漢方医学が発展しました。しかし当時、これに出ていた「斑猫」の日本の種類への当てはめを間違え、山道などで人の歩く前へ前へと飛んで止まる習性から★「みちおしえ(道教え)」と呼ばれていた★無毒の甲虫に「和(日本)の斑猫」の名を与えてしまったのです。ですから大奥で若君の謀殺などに使われた「斑猫の粉」は、若君の栄養にこそなれ、これを使った謀殺はことごとく失敗したはずです。それどころか現在でも名前からこの無毒のハンミョウを猛毒と信じている識者がたくさんいます。日本にもカンタリジンの含有量がとりわけ多いツチハンミョウ科のマメハンミョウという種類がいて、古くから体液に触れただけでもヤケド状の水ぶくれになることまでわかっていながら、これが毒薬として使われた形跡はありません。マメハンミョウは成虫が大豆の葉を食べる害虫、幼虫がイナゴの卵をたべる益虫という奇妙な虫で、のちにこの虫は発泡剤の原料としてカンタリスの名で「日本局方」にも登載されました。しかし、近年はイナゴの激減からこの虫も少なくなり、発泡剤の原料はもっぱら中国から輸入した前記のキオビゲンセイが使われ、 最近では「局方」からもその名が削除されています。その昔、悪相の御殿医や根性の悪い側室が若君の謀殺に正しくマメハンミョウの粉を使っていたら、江戸時代の大名家の★歴史は大きくかわっていたかも知れません。

 

・・・なかなかおもしろいオチです。「ザリガニ」から「セミ」、さらに「ゲンセイ(ハンミョウ)」へと脱線してきました。この毒薬「カンタリジン」をさらに調べますと、

 

《カンタリジン》「甲の薬は乙の毒」自然研小笠原事務所ブログより

http://ogasawara.jwrc.or.jp/?eid=84

小笠原諸島の多くの昆虫たちが、グリーンアノールをはじめとする外来種によって数を減らしている中、カミキリモドキたちはこのカンタリジンのおかげで★生き残ってきたのかもしれません。

毒を嫌がるものもいれば、逆に利用するものもいるとは面白いですよね。嫌われがちなものでも、色々な角度から見てみると、知らなかった素敵な一面が見えてくるかもしれません。

 

※【野良山伏連載】第8回「山の媚薬」

https://www.discoverychannel.jp/0000005451/

★多くの毒がそうであるように、古くは微量を用いてイボを取ったり発毛剤にしたり、内服して利尿剤や膀胱炎の治療などに使われたのだそうです。また尿道を刺激することから媚薬としても珍重されました。

 

《カンタリジン世界》東京都立大学動物生態学研究室より

http://tmuanimalecology.blog.fc2.com/blog-entry-530.html

カミキリモドキ類やツチハンミョウ類が分泌する有毒のカンタリジンという化学物質に誘引される節足動物がいます。カンタリジンを介して互いに関係をもつ節足動物群集を「カンタリジン世界」と呼んで、その世界の成り立ちについて研究をしています。今回、伊豆諸島から小笠原諸島の島において、どのようなカンタリジン世界が形成されているのかを明らかにした論文がonline firstで出版されました。本土では、複雑な世界が広がっているのに対し、島嶼では予想通りカンタリジン世界は縮小し、遠く離れた小さい島ではたった一つの相互作用しかない世界になっていました。カンタリジンの供給が不安定だと、相互作用も不安定になり、関係を存続させにくくなるのかも知れません。

 

《図説「毒と毒殺の歴史」》著:ベン・ハバード/訳:上原ゆうこ/原書房2020

クレオパトラ、ボルジア家、秦の始皇帝、サド侯爵といった歴史上の人物から、現代の秘密工作員やテロリストまで、さまざまな毒と人間との興味深い関わりを集大成。また関連して各時代で代表的な毒物について、概要、作用、対処の仕方、有名な中毒を解説した。毒と、毒を用いた犯罪の歴史ビジュアル図鑑。

 

 

※鳥のオスが繁殖期に「有毒昆虫」を多く食べる理由

http://shindenforest.blog.jp/archives/73197321.html

鳥のほとんどは★一夫多妻制です。ノガンを対象にした調査では、★カンタリジンという成分を含む虫を積極的に食べていることが観察されています。この成分は、毒性が強いものの★寄生虫を排除する虫下しにもなります。その虫下しになる量はノガンが良く食べているツチハンミョウでは1~3匹で十分です。ところが観察の結果、繁殖期のオスはさらに大量のツチハンミョウを食べていることが判明しました。この毒成分カンタリジンは、ヒポクラテスの時代から水腫の治療などに使われており、またその後はイボの治療、人口中絶、育毛剤、催淫薬、毒殺のためなどとして使われてきました。ただし、その毒性の問題から内服用よりも、多くは外用として使われていました。日本でも以前は日本薬局方に記載されていましたが、その毒性の強さと薬効の利用が減ったことから、第9回改正で薬局方から外されています。少量を内服した場合は、激しい胃腸炎を起こし、出血性で激しい焼けるような痛みを伴い、嘔吐や血便などの症状が出ます。また尿路系には乏尿、焼け付く排尿痛、血尿などで、尿路系に耐えられないほどの痛みが走るほか、男性の場合は精管から精巣まで痛みが広がります。さらに、痛みのある持続性勃起症が起こることがあります。多量に内服摂取した場合は、激しい胃腸炎に続き、精神錯乱状態になり、腎不全から無尿、尿毒症性昏睡へと進行し、最終的には死に至ります。昔、北アフリカに駐留していたフランス軍兵士たちが、★カエルを食べたことにより勃起が収まらなくなってしまった事件がありました。これはのちの研究によると、カンタリジンを含む虫を食べたカエルの後肢の筋肉に、カンサリジンが蓄積されていたためであることが判明しました。カンサリジンは強力な勃起薬でもあったのです。(参考文献:臨床家のためのホメオパシー・マテリアメディカ)おそらく鳥たちはこの天然の勃起作用を理解していて繁殖期に多く食べているのでしょう。18世紀の悪名高いフランス人★マルキド・サド公爵は、女性に催淫薬として、この虫のカンサリジン入りのチコレートを食べさせたことで告訴された話は有名です。

 

・・・いやあ、調べれば調べるほど「カンタジリン」恐るべし。その毒をも役立てようとする人間の飽くなき「知恵」というか「欲望」というか、さらに恐るべしですね。

 

《害虫》イカリ消毒「野外の有毒な虫」より

節足動物門/昆虫綱/コウチュウ目/カミキリモドキ科 Oedemeridae

https://www.ikari.jp/gaicyu/54020d.html

カミキリモドキ類 Oedemeridae

アオカミキリモドキ Xanthochroa waterhousei Harold

キクビカミキリモドキ Xanthochroa atriceps Lewis

キイロカミキリモドキ Xanthochroa hilleri Harold

ハイイロカミキリモドキ Eobia cinereipennis (Motschulsy)

 

・・・現在、新型コロナウイルスで世界は混乱していますが、人間とウイルスも「薬と毒」の関係にあるかもしれませんね。「過剰な反応」をひかえ、冷静に「情報収集」「科学的分析」「総合的判断」に努めていきたいものです。とは言え、知らないことがあまりにも多いので、「情報収集」だけで、こんな状態です。分析まして判断なんて、ほど遠いですね。

 

★最後に繰り返しになりますが、毒があるなしにかかわらず★「過剰反応」することなく、虫たちを刺激しないように★静かに観察することです。よく知らない虫は、★素手でさわったりしないようにしてください。そういう意味では、★デジカメで撮影することが一番です。家に帰ってから調べるようにしましょう。そして、一つずつ正確な情報を知り、★自然と友達になっていきましょう。★観察ノートなどに整理しておくことをお勧めします。キケンを知るためにも★「体験」が重要です。★「避ける」のではなく「うまく付き合う」ことです。大人がしっかりしなくてはね。よろしく