・・・続探偵アートスクープも100回を迎え、今回が最終回です。まだまだ「風の王国」については追いかけたいと思っておりますが、現段階での終結点(展)として「葛城アート」に引き継ぎたいと考えております。さて、瀬戸内から岡山への紹介を続けます。
《岡山映像ライブラリーセンター》
700-0823岡山市北区丸の内2-7-7(RSK第2ビル)/086-225-8622
RSK山陽放送が所有する映像や音声などの素材をデジタル化して保存するとともに、より多くの方に貴重な資料を視聴していただくため、2015年4月に開設されました。当センターに保存されているのは、1953年の山陽放送創立時より残されている6ミリテープや16ミリ映像フィルム、アナログ・デジタルのビデオテープなどです。このほか、一般家庭や企業に眠っているフィルムをデジタル化する活動も行っており、それらの貴重な資料もあわせて分類保存されています。センター内の視聴ブースでは、その保存されている映像を視聴準備の整ったものから順に公開しています。大正時代の倉敷の様子や昭和初年の笠岡港、戦後の豊かになっていく生活の様子など、人々に懐古と憧憬の念を抱かせる映像ばかりです。ぜひ一度、足をお運びください。
《対面所跡》
http://www.city.okayama.jp/museum/yuraihi/index.html
在封2年足らずで急死した小早川秀秋に続いて岡山城主となったのは、わずか5歳の池田忠継でした。実際には、忠継の兄・池田利隆が岡山城に入城して藩政を執り、「備前監国」と呼ばれました。対面所は、この利隆が西国大名などとの面談に使いましたが、後には藩主の一族の居館に使われました。現在、この場所には★林原美術館があります。この美術館の門は、生坂支藩の岡山屋敷の長屋門を移したものです。
《林原美術館》
700-0823 岡山市北区丸の内2-7-15/086-223-1733
http://www.hayashibara-museumofart.jp/
2018年にサーペンタイン・ギャラリーで個展を行った若手作家イアン・チェンの映像作品《BOB(信念の容れ物)》(2018-19)を見ることができる。人工的につくられた事物が異種混合的に絡み合う映像作品を手がけるチェンは、様々な要素によって構成されている「BOB」という人工生命体を生み出した。生命をかたちづくる輪郭線はどこにあるのか?という問いからつくられたBOBは、人間の「欲望」と「信念」の関係性によって揺れ動く存在。鑑賞者もBOBのサイトからアプリケーションをダウンロードすることで、BOBに影響をおよぼすことができるという。
私(アーティスティックディレクター:ピエール・ユイグ)が今回もっとも感激したのは、林原美術館の「アン・リー」でした。私は十代の頃にあの作品を通じてユイグさんのことを知り、それ以降もポンピドゥー・センターでの個展やドクメンタでの展示など、これまで色々なところで作品を拝見してきました。ただ、やはりアン・リーは私の世代の人間にとって特別な作品であり、それが今回ティノ・セーガルの作品と呼応しつつ展示されていたことにとても感動したのです。まず、彼女(アン・リー)を故郷に連れてくるというのが第一でした。最初はティノのアン・リーだけでいいと思っていて、自分の映像作品を出すつもりはなかったのです。けれどもティノに「アン・リーの作品を出してほしい」と言ったら、「(ピエールの)映像ももちろん出すでしょ?」と言われて出品することになった。私たちの作品が一緒にあることで、映像のなかで、二次元で表現されていたアン・リーが、生まれ変わったかたちで三次元の生身の身体として出てくる。そういうコネクションが見出しやすくなりましたね。それはよかったと思います。私自身は、はじめからティノのアン・リーとイアン・チェンの《BOB》を一緒に展示したいと思っていました。ティノとイアン、私がふたりに共通して面白いと思っているのは、ふたりとも何かをモディファイする能力があるということです。私は「モディファイ」という言葉が好きでよく使うのですが、これはただ外側に変化を与えるだけではなく、中身を「変容させる」というイメージがあります。そこには外側の物理的な変化だけではなく、中身の変容、内省的な変化も含まれている。林原美術館に関して思い描いていたのは、外からの色々な影響を取り込んで成長していくBOBの存在の仕方が、アン・リーの存在によって少しだけ影響されるのではないか、ということでした。「ボブの中身を取り出したら、実はそこにアン・リーの要素がある」というようなアン・リーの存在の仕方も面白いかなと思っています。
・・・ピエール・ユイグ作の「2分、時を離れて」。CG動画の少女、アン・リーの映像が終わると驚きの現象が、これにはどう対応・対処していいのやら「金縛り」状態でした。まさしく想定外、眼前にいる少女と対面しているのですが、今思えばまさしく「自分自身と対面」していたような気がします。そしてBOBのアプリをダウンロードして、帰阪後はそれらの余韻に浸っているところです。
★《遅延線》メリッサ・ダビン&アーロン・ダヴィッドソン2019/於:石山公園
「人は羊水の中から人生が始まっている」と語るメリッサ・ダビン&アーロン・ダヴィッドソンは、時間のスピード、フリーズ、ディレイへの思考から水の流れと映像を組み合わせたインスタレーションを手がけた。
★《以上すべてが太陽ならいいのに(もし蛇が)》リリー・レイノー=ドゥヴァール
https://www.okayamaartsummit.jp/2019/press/524/
岡山芸術交流2019に参加するアーティストのリリー・レイノー=ドゥヴァールが来岡し、「岡山芸術交流は私にとって『スタジオ』のような存在。作品を発表するだけでなく、この展覧会を舞台として作品を生み出したい」と意欲を語りました。レイノー=ドゥヴァールは1975年、フランス生まれで、ローマ、フランス・グルノーブル在住。ダンス、文筆、映像、彫刻、ビデオインスタレーション、パフォーマンスなど様々なジャンルで活動中。ジュネーブ造形芸術大学教授で、友人や家族、学生と共同制作も行っています。岡山芸術交流では、イタリア人映画監督ピエル・パオロ・パゾリーニの暗殺をテーマにしたシーンを岡山市中心部で上演・撮影します。レイノー=ドゥヴァールは作品について「岡山では旭川が重要な存在として捉えられていると思います。一つのシーンをここで撮影します。岡山は私の制作の場となり、私は街と身体的に結びつきます。大都市よりも多くのスペースがあるので、心地よく制作できそうです。」と話します。
★《幸福が(ついに)35,000年にわたる文明化の末に(ヘンリー・ダーガーとシャルル・フーリエにちなんで)》ポール・チャン
・・・最後はちょっと駆け足で「後楽園」を通り抜け、大阪へ。(完)