《NEWS1》2017.1.25朝日新聞デジタルより
「笑い」の力はがんに効く?今年3月に大阪市中央区に移転し、オープンする大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」(現・成人病センター、大阪市)が、漫才や落語によってがんに対する免疫力が上がるかを調べる実証実験を始める。5月から約4カ月間、血液検査などで効果を確かめ、17年度にも論文にまとめる計画だ。成人病センターによると、吉本興業や松竹芸能、落語家・桂米朝(故人)ゆかりの米朝事務所が実験に協力。継続的に参加できる数十人の患者に、血液や唾液(だえき)を採取後に病院のホールで漫才や落語を鑑賞してもらい、鑑賞後も血液などを採取。医師らが鑑賞前後で免疫細胞がどれだけ活性化したか調べる。鑑賞の頻度による免疫細胞の活性化の違いも調べるという。笑いと免疫力の関係を示した研究は過去にもあるが、担当者は「がん患者を対象に、ここまで長期で継続的に実証する例はないのではないか」と話す。府は、2025年の国際博覧会(万博)の誘致で「健康」をテーマに掲げている。松井一郎知事は25日の定例会見で、笑いの効果が示せれば万博でもアピールできると期待を示した。
《NEWS2》2017.3.25朝日新聞デジタルより
西日本で最も入院患者数が多い大阪府立成人病センターが老朽化にともなって移転し、名称が「大阪国際がんセンター」となって25日にオープンする。新病院は大阪城のすぐ西側で、病室の面積を1・5倍に広げるなど、治療だけでなく「患者の満足度」にも力を入れるという。新病院は地上13階、地下2階建てで、総事業費は約290億円。手術室を9室から12室に、外来で抗がん剤治療をする場所も20床から34床に増やす。多方向から高い精度で放射線を当てる「強度変調放射線治療」(IMRT)ができる装置を3台備え、隣に建設中のがん細胞以外の正常な細胞を傷つけにくい重粒子線治療ができる施設とも連携する。府立成人病センター当時のがん入院患者数は年間約8千人で、近畿を中心に中四国や関東など全国から患者が集まった。新病院では、病床数は500病床と変わらないものの、2014年度に84・5%だった病床利用率を20年度に95%に高める計画だ。そのために医療設備だけでなく、病室やソフトの水準も高めた。茶色いじゅうたんに木目調の壁、ベッドの横にはゆったりしたソファが並ぶ。大きな窓からは大阪城が一望できる。新設する特別病室は広さ27~45平方メートルで高級ホテルのようだ。11室がこの仕様で料金は1日3万2400~5万9400円。高額な特別室を完備する患者数が全国最多のがん研有明病院(東京)や国立がん研究センター中央病院(東京)などに合わせた形だ。このほか、4人部屋の一般病室は約45平方メートル(追加料金なし)、個室は20平方メートル前後(1日1万6200円)で、いずれもこれまでより5割広くなる。ソフト面でも、院内のホールで在阪の四つのオーケストラが年間計16回、演奏会を開くほか、ウィッグや化粧品の展示会も月1回実施する。吉本興業や松竹芸能などと協力し、患者に漫才や落語を鑑賞してもらい、免疫細胞が活性化するかを調べる実験もする。広報担当者は「がん患者に選んでもらえる病院にしたい」と話す。
※大阪国際がんセンター:橋下徹知事時代の2009年、府は設立から50年たち、老朽化が進んだ府立成人病センター(大阪市東成区)を大手前地区に移す方針を打ち出した。しかし、府議会の自民党が現地での建て替えを主張して対立。専門家による委員会の「大手前移転の方が工期が短く、患者への影響が小さい」との答申を経て、11年10月に府議会で大阪維新の会と公明などの賛成で大手前移転が決定した。
《大阪国際がんセンターの絵画の公募》アートな病院の展開
http://www.mc.pref.osaka.jp/hospital/utility/kaiga/
http://www.enokojima-art.jp/e/event/2016/12/08/4750
このたび、大阪府立成人病センターは、平成29年3月末に「大阪国際がんセンター(以下「新センター」という。)」として移転・オープンするのに伴い、「患者様の視点にたったサービスの提供」の一環として、患者様の癒し(精神的ストレスの軽減)となる環境を整え、併せて大阪府の協力の下、新進芸術家を発掘するため、絵画の公募を行います。公募期間は平成28年11月28日~平成29年1月31日までです。今回の公募は、新センター2階外来に「ホスピタルストリート」を設け、横6.5m×縦2.5mの巨大なキャンバスに絵画を募集するもので、審査委員には、建畠晢先生(多摩美術大学学長)、秋元雄史先生(東京藝術大学教授・大学美術館長)にお願いしています。なお、入選作品1点については200万円で買い取り、この財源については当センターの寄付金を充てることとしています。併せて大阪府が所蔵する「大阪府20世紀美術コレクション」の数々の作品も新センターで積極的に展示する「アートな病院」の展開をめざしていきます。
《NEWS3》2017.3.30毎日新聞より
病生活を続ける患者や家族にとっての望ましい医療・病院の実現に向けて、医師や看護師をはじめとした医療スタッフは試行錯誤を重ねている。企業でも患者のQOL(生活の質)を高めようと、専門技術を生かした新しい事業に乗り出す動きが出てきた。大阪国際がんセンターの左近賢人病院長ら3人に語り合ってもらうとともに、がん患者向け下着などを開発販売するグンゼと、メーキャップで患者を勇気づける資生堂の取り組みを紹介する。
●センターがきれいに生まれ変わりました。どんなお気持ちですか?
左近 受付・待合室をはじめ病室や処置室が広くなり、スタッフが緊急時も行動しやすくなったうえ、患者さんも落ち着いた気持ちになっていただけるのではないかと思っています。何より、患者さんのための医療に向けた再出発だという思いを強めています。
北坂 診察室そばに患者さんをサポートできるブースができましたので、医師と連携しながら患者さんに対応できるようになりました。また、がん治療で外来のウエートが高まっているのですが、私が属している頭頸部(とうけいぶ)外科では、退院後に治療を受ける人のためのサポート外来を開設しました。頭頸部がんの患者さんは食べられなかったりして治療が完遂できないケースもあるのですが、そうした患者さんも手厚くサポートしていきたいと考えています。
左近 退院された後も切れ目のない外来を進めていきたいということですね。
髭野 この1年で、患者さんの診察待ち時間を短縮するため、クイックイン外来を実現してきました。採血をスピーディーに行うことで、従来1時間以上かかっていた採血待ち時間を30分程度にすることができました。新しい病院では輸血や生化学、血液などの検査室が1フロアに集約されましたので、より時間短縮が可能になると思います。患者さんの負担をできるだけ軽減するように努めていきたいと思っています。
●病院名に「国際」が付きましたが、その意図は?
左近 決して、最近増えている医療ツーリズムに乗った海外の患者さんの受け入れに力を入れるということではありません。患者サービスも国際レベルにしたいという決意を込めています。採血の話に限らず、医療成果の向上に力を入れるあまり、患者サービスがややおろそかになっていたのではという反省がありましたから。
●ソフト面では変化はありますか?
左近 待合室や病室、採血室など患者さんの目が届くところにたくさんの絵を掛けています。大阪府が所蔵している★20世紀美術コレクションの貸し出しを受けたもので、一流の作品ぞろいです。2階の外来受付には、★公募展を実施して入選した新人アーティストの縦2メートル、横6メートルの作品も飾りました。少しでも心の癒やしになることを願っています。
●お笑いが医療に与える影響の研究にも取り組まれると聞いています。
左近 笑いが免疫力を高め治療効果を上げるという指摘は以前からありました。今回、大阪が誇るお笑いの吉本興業、松竹芸能、米朝事務所のご協力を得て、月に2回程度患者さんに参加してもらって漫才や落語、笑いヨガなどを開いていただき、その前後の血液検査によって笑いの効能を探っていく予定です。このほか、オーケストラによる定期演奏会も計画しています。
・・・「新病院」は「新美術館」と呼んでもいいほどに、アートが充実していました。