こみあげてくる悲しみに抗いもせず

息子は声をあげて泣いていた



ひとしきり悲しみを吐き出した後

また、泣いた





僕は、数年前から

生きていく中で巡り合う喜怒哀楽は



豊かさなんだと思うようになった

そして本当に、そうなんだと

思えるようになった



そして自分が最後に旅立つ時

本当に、そう思うんだろう






昨日、息子から連絡があった


シナモンが死んじゃった…

嗚咽を繰り返し、堪え切れない

感情とともに発した言葉




シナモンは小鳥でね

僕が元の住んでいた家から出て

少ししてから、その家に迷いこんできた



その家の新しい家族になり

そして、その家族の心に灯りをともした




数年が経ち、いつの間にか居ることが

あたりまえの存在となっていて


その鳴き声が、家族にとって

その家の日常の自然な音になって行った





息子にとっては

初めて体験する身近な大切な存在との別れ

どうしようもない感情が身体中を駆け巡る



いまは動物の葬儀が普通にあるんだね




小鳥が火葬される時に

息子は僕の腕の中から離れた場所に

移って行った




少し間を明け、どうした、と声をかけみる



シナモンが焼かれるの見たくなくて…

それと僕がいるとママが悲しめないから


と、母親もつらい思いなことを知っていた





彼女の、つらい時に助けてくれて

ありがとう、という言葉が印象的で

それを物語っていた





葬儀の後、小さな小さな小瓶に入った

小鳥の遺骨を小さな巾着をいれて


手でその巾着を包み抱きながら

息子は涙とともに最後の別れを告げていた





身近で、かけがえのない存在の

小鳥から愛を貰い、愛を与え

別れを学んだ



息子もまた、大人になって行くのだろう





みんなの耳に

シナモンの鳴き声が聞こえた



いつものように

それぞれの肩に乗り


そして、羽ばたいて行った








みんな悲しまないで

僕は幸せだったよ



と告げながら




まなぶ