サボればサボるほど売れる営業マンの話 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」

僕の友人に、不思議な営業マンがいる。

 

会社に勤めるサラリーマンだが、そこで出世しようという気など全くなく、「いかにサボるか」をモットーに働いているような人である。昭和の無責任男・植木等の、平成・令和版といったところだろうか。

 

ある集まりでその友人と久々に会ったので、「相変わらずぼちぼちやってますか?」と聞いてみた。

 

「いやー、もともと適当にやってたのが、最近さらにサボりがひどくなってますね(笑)」とのこと。しかも、「サボればサボるほど、なぜか売上が上がっちゃうんです」とおっしゃる。

 

聞いてみたら彼の売上は、同じ会社の平均的な社員の、およそ10倍だという。

 

「でも僕、特別なことは何もやってないんですよ?むしろサボりまくってるのに。朝は10時くらいに会社を出て、まずジムに行くんです(笑)。そこでひと汗流して、お昼を食べたら、喫茶店で珈琲を飲んでのんびりしてます。お客さんからの電話も、会社に戻ってから対応するので。理由は本当にわからないんです」

 

それなのに、お客さんから注文がどんどん入ってくるそうだ。そういう話を聞くと、僕も愉快な気持ちになって、その売上の理由をいろいろ想像してみた。

 

「そのガツガツしてない感じがいいんですかね?あとは、お客さんからすると、なかなか捕まらないもんだから、いつの間にかレアキャラ化して、希少性が高まってるのかもしれませんよ。『おお、つながった!せっかくだからこのタイミングで注文しとかないと……』みたいな(笑)」

 

「どうなんですかね?本当にわからないんですよ(笑)」

 

もちろん人柄の良さはバツグンなので、同じ注文するなら「彼に」となるのかもしれない。それにしても、彼のような「仕事」が成立するのは、いろんな意味で面白い。

 

最後に彼が言っていたのは次のようなことだった。

 

「手放すと、そこに何か入ってくるんですよ。そして嫌なことからはできるだけ逃げる(笑)」

 

彼の「仕事術」は、まさに彼の生き方そのものであった。とすると、実は仕事術に正解などなくて、「その人の生き方」が仕事に反映された時、それがその人にとっての「仕事術」になっているのかもしれない。