我が時代、ついに来たれりーー。
立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏が、「学校教育には『変態コース』が必要だ」と主張している。
■出口治明「日本に必要な"変態"の作り方」(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース
こういう時代が来ることを予見していた僕は、今後高まるであろう「変態需要」に備えて、「簡単に変態になれる方法」をあらかじめ発見し、書き記しておいた。それを含んだエッセイ集がこの本である。
■杉原白秋『文筆家の分泌物 簡単に変態になれる方法』
もちろんこれを買っていただければ最高だが、ここは時代の要請に応えて、「簡単に変態になれる方法」の箇所を公開しようと思う。日本の未来のために、少しでも役立てばうれしい。
時代は「変態」を求めている。
「でも、私には才能がないから……」
と悩んでいるあなたも、大丈夫。
これを読めば間違いなく「変態」になれるはずだ。
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■簡単に変態になれる方法(その1)
非常に簡単に変態になれる方法を発見した。というか、たまたま見つけた。
朝風呂に入ったあと服を着るとき、いつもならパンツを一番最初に履くところを、なんとなく、靴下を先に履いてしまった。
そのときの感覚が、「ああ!」というか、「これか!」という感じだったのだ。
「パンツ一丁」という言葉はあるが、「靴下オンリー」となると変態だ。やはり「隠れるべきところが隠れていない」ということに問題があるのだろうか。
しかし、服を着る順番によって、一時的にせよ変態が完成するということは、「あらゆる人間に変態の可能性がある」ことを意味する。
愉快ではないか。
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■簡単に変態になれる方法(その2)
前回、「簡単に変態になれる方法」について書いた。
要するに「パンツ一丁」は普通の人だが、「靴下オンリー」になれば変態、という話である。そしてその要因は、「隠れるべきところが隠れていない」ことにある、と結論づけた。
あれから五年。ついにもう一つの「簡単に変態になれる方法」を編み出してしまった。それは本当に偶然の産物であった。ノーベル賞級の発見も、その多くは狙ったものではなく、「偶然の産物」であると聞いたことがある。やはり共通するものがあるのだろう。
その瞬間は、やはり風呂上がりに服を着ようとしたときにやってきた。
パンツを履こうと寝室に入ると、ベッドの上に思いがけず「ネックウォーマー」が置いてあった。すると僕の手は、まるで何かに導かれるように、そのネックウォーマーを手に取った。気づいたときには、僕はもうネックウォーマーを装着していた。
「あっ……」
全裸にネックウォーマー。そう、「パンツ一丁」ならぬ「ネックウォーマー一丁」である。もうまぎれもない「変態」の完成だ。
なぜそれが完成し得たか。言うまでもなく、「隠れるべきところが隠れていない」からだ。
しばらく恍惚としたまま立ち尽くした僕は、自らがいよいよ「新しい領域」に踏み込んだことを、知った。
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