ある図書館のトイレに、
意表をつく「ふりがな」を発見した。
「館内では、飲食したり、ガムをかんだりしないで下さい。」
一見ふつうの文章だが、微妙な違和感を感じてよく見てみると、
「飲食」のふりがなが「のみたべ」になっている。
え? 「いんしょく」ではないのか?
しかし考えてみれば、図書館は大人だけでなく
小さな子どもたちもおおいに利用する。
正しく「いんしょく」と書いたとしても、
子どもたちにはその「いんしょく」の意味が
わからないかもしれない。
漢字は読めたとしても、
その意味がわからなければ、
本当には「読めた」ことにはならない。
だからあえて「のみたべ」にしたのではないか。
「ふりがな」や「ルビ」というものは、
読者がその文字を「読めるように」振るものである。
だとすれば、この「のみたべ」は誤りではなく、
むしろ「ふりがな」の本質を
掴んだ表現ということになる。
思わずその張り紙の前で頭を垂れ、
敬意を表したことは言うまでもない。