辻満希憲氏「人と鳥」 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
以前のブログで紹介した「日本のガラス展」。


ガラスというと、
粘土に比べてずいぶんと
加工がむずかしいイメージがある。
固いし、すぐ割れるし……。

ところがやっぱり「制約は創造の母」。

ガラスの概念を覆すような
面白い作品がたくさんあった。

そんな作品の中でも、
群を抜いて独創的だったのが
辻満希憲氏の作品。








技巧を凝らし、
「美しさ」を追求する作品が目立つ中で、
この「ぬけぬけとした」存在感。

他人に評価されることを目指して
作品づくりをする人も多いであろう中で、

「これどう考えても
 自分が作りたいもん好き勝手に作ったやろ!!」

と突っ込みたくなる自由さ。

だがその背景には、
作家の深い思想が横たわっている。

彼がテーマにするのは、
いつも悪役を担わされる「鬼」や、
害虫として敵視される「蛾」など、
いわゆる「嫌われ者たち」。

しかし彼にとっては、
その「嫌われ者たち」は
共に生きる仲間にほかならない。

農業では目の敵にされがちな雑草が、
実は土を豊かにするために生えているように、
それぞれの命は、
それぞれの役割を持って存在している。

もしかすると
彼がつくっているのは、
過去の歴史の中で敵視され、
排除されてきた仲間を弔い、
未来への共生を誓うための
「慰霊碑」なのかもしれない。

その作品の中には、
つねに命の循環が描かれている。

私たちが模索する新しい社会の幕開けは、
案外、彼のような若い芸術家によって、
すでに告げられているのかもしれない。


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