内山節『新・幸福論』を読んで | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」

内山節『新・幸福論 「近現代」の次に来るもの』新潮社(2013)

内山節『新・幸福論』を読んだ。

大事なものが遠くに逃げていくという「遠逃現象」と、
結び合う世界を失い交換可能となった「人々」をキーワードに、
僕たちが生きる現代という時代を読み解く珠玉のエッセイ。

個人を基調とする近現代という時代は、
進歩や発展というイデオロギーの中で展開してきた。

その中で人間たちはいったい何を獲得し、
何を失ってきたのだろうか。
人間は果たして幸福になったのだろうか。

そのことを確認しなければ、
この混迷の時代から
未来を展望することなどできないだろう。

著者は関係のなかに社会をとらえ、
関係のなかに自己や個をとらえようとする。

「人間は関係のなかで自己の存在の場を
 つくりだしているのであり、
 それを消去したところに存在はない。」

だとすればこう言えるだろう。

幸福は「個人」の中には存在しない。
幸福な「関係」があるだけである、と。