時間にまつわる名言集(29) | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」


一見茫としてとりとめもなく見える海を、
漁師は細かく分節して記憶する。
船の道に沿って相貌を変えていく景色。
磯の岩、島、入り江、岬、海底の岩、海底の砂地、
海流、潮の干満、風の動き、海面を渡るカニや月日貝、
太陽や月や星の位置。そして潮の匂い。
そうした海のしるしは、
四季の時間に応じてある配列を示し、
見えない海図と見えない時刻表を作っている。

(栗原彬)


栗原彬「「文明の時間」と漁師の時間」北山晴一編、立教大学国際会議報告書『近代日本における時間の概念と経験』立教大学(1997)243頁