遅刻の誕生 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
遅刻の誕生―近代日本における時間意識の形成/三元社

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『遅刻の誕生』というタイトルからして、
エンターテイメント的な見せ方の本かと思いきや、
がっつり内容の濃い論文集だった(笑)。

しかし、日本の歴史や時間などに
興味のある人にとっては
エンターテイメントそのもの、
と言える面白さがある。

明治の改暦はまさに
「時間の開国」であったわけだが、
そこから日本の人々の生活の営みは
大きな変化を余儀なくされる。

それは、
「自然と人間の関係によって紡がれる時間」から、
「政治や経済を中心にした時間」への
移行とも言えるのではないか。

現在の日本のように、
「時間厳守」を当然とした時間意識は、
自然に生まれてきたものではなく、
国家や制度によって
意図的に刷り込まれてきたものである。

例えば次のようなことがある。

「時間規律を庶民のレベルでも
 浸透させていくことは、
 大正期に力を入れてなされたが、
 その最も象徴的なできごととして
『時の記念日』の制定を挙げることができよう。」(132頁)

「その記念日の趣旨は時間厳守、
 時間規律の励行ということにあった。」(133頁)

政治や経済を第一とした時間の下で、
自然や人間を大切にする社会の形成が本当に可能なのか。
私たちはもう一度ここから
問い直さなければならないような気がする。