かがり火 No.130 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
$独唱しながら読書しろ。-かがり火 No.130


この雑誌を読んだのは今回が初めてだったのだが、
とても興味深い内容で、ほとんどの部分に目を通してしまった。

特に、新編集長となられた内山節さんの話、
大熊孝さんの八ツ場ダムの話、
小田切徳美さんの「誇りの空洞化」の話などが印象的。

どれもこれからの日本が進むべき方向性を示唆しており、
無名の人物を取り上げるという編集方針が活きている。

たしかにマス受けする内容ではないのかもしれないが、
そこにこそこの雑誌の価値がある。

編集後記にある、
「社会の変化に一喜一憂する暮らしからの脱却」
という考え方は、自殺対策という視点から見ても
最も必要とされていることだと言える。

そしてそこには、人と人との
つながりの再構築が欠かせない。
この雑誌には、そのための
ヒントがたくさん含まれている。


満足度
★★★★☆


【引用メモ】

いま、地域でいちばん問題なのは
「誇りの空洞化」である。(p10)

新しい農山村のコミュニティーづくりが
重要になると思います。そのためには、
① 住民参加の場づくり、
② 金とその循環づくり、
③ 暮らしのものさしづくりが必要です。
(中略)東京などを暮らしのものさしの
基準にするのではなく、地域の中に基準を構築する。
それは地域の歴史であったり、自然であったり、
郷土料理、人情、文化であったりするわけです。(p12)

暮らしのものさしづくりのためには、元水俣市職員の
吉本哲郎氏が提唱する「地元学」のような活動が
必要だということも強調したいと思います。
「誇りの空洞化」とか、暮らしのものさしづくりなどと
言っても、こうした心の問題は定量化できません。
そのため、研究者からの発言は多くはないと思いますが、
むしろ私はこうした側面を強調し、
そのための実践を進めることが、
地域再生には最も重要なことだと思うのです。(p12)

「イタリアは国がつぶれても、町や村はつぶれない」(p17)

練習していくうち、みんなで何かを
することの楽しさが分かってきた。
試合を通じてた他地域との交流も生まれる。
(中略)人が集まる場をつくれば、集落は変わる。(p39)

朝、都市に勤めに出て、夜、帰ってくる、
そんな生活ができる土地だと、
隣人と没交渉でも生活できるんですよ。
でもそれでは集落の伝統文化も
消え去って、寂れるばかりです。
年を取るたびに寂しくなるなんて嫌ですから、
集落は元気でいたい、と思うんです。(p39)

本誌の底流にあるのは、社会の変化に
一喜一憂する暮らしからの脱却です。(p42)

人間の社会は経済効率を
絶対的なものと考えた時から、
地方が軽視され、過疎が始まり、
地場産業は衰退し、田園風景が
崩壊したのだと思います。(p42)