甲状腺クリーゼ


甲状腺中毒症の患者さんでは、普段、体が甲状腺ホルモン過剰に対する代償をしています。そこに何らかの誘引が加わると、その代償機能が破綻して相対的に甲状腺ホルモン過剰状態となり、複数臓器が障害を受けます。これが甲状腺クリーゼという状態です。

ここでいう、「何らかの誘因」とは、ストレス(外傷、手術)や感染による発熱などです。


甲状腺クリーゼの症状は複数臓器に渡ります。

1.中枢神経症状(不穏、精神異常、意識障害、昏睡)

2.消化器症状(嘔吐、下痢、黄疸)

3.発熱(38℃以上)

4.心不全

5.頻脈(130回/分以上)


バセドウ病や慢性甲状腺炎などの患者さんが風邪を契機に発熱、頻脈、昏睡の状態で救急車で運ばれてくるっていう感じでしょうか。


治療としては、

①甲状腺ホルモンの分泌と活性化の抑制

②甲状腺ホルモンの作用(主に交感神経β作用)の遮断

③水、電解質補正

です。

①では、

a.チアマゾールやプロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬

b.無機ヨード

c.ステロイド

が使われます。

ヨードは、Wolff-chaikoff 効果により甲状腺ホルモンを低下させます。ステロイドはFT4からFT3への変換を抑制する効果があるので、甲状腺ホルモンの活性化を抑制できるわけです。

②では、そのままですがβ遮断薬が使われます。

③は補液などですね。


ちなみに、発熱に対しては、アセトアミノフェンを使います。これは、NSAIDsは、FT3を増加させる働きがあるため、甲状腺クリーゼには使えないからです。禁忌ですので注意しましょう。