本当の"飛び級"は、具体を深く学んでから | 学びスタジオ®︎ブログ〜教育あれこれ

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小さな個人塾を経営しています。「一緒に学ぶと、可能性が広がる」と考えています。教えるより、考えるように導きます。子どもと一緒に考えると、子どもが能動的に考えるようになります。そして、一緒に考える楽しさと、一人で考え抜く力を身につけていきます。

 

こんにちは、学びスタジオ®の奧川えつひろです。

 

国が進める教育のニューノーマルの多様な学びの中で、

❶高校で大学の授業を受けること

❷大学への飛び入学のこと

いわゆる、先取り学習、飛び級を促進することが書かれています。

 

今回は飛び級について書きます。

 

❤︎飛び級の特殊算批判

 

飛び級が、

中学受験を批判する理由に、

算数の特殊算に代表される

中学受験のための勉強が、

無味乾燥な知識の詰め込みにすぎない

というのもです。

 

飛び級は、

中学で習う方程式を先取りで学べば、

特殊算を使わなくても

中学受験の問題は簡単に解ける。

といいます。

 

しかし、その考え方は問題があると思います。

 

❤︎中学受験の文章題

 

中学入試問題は、

確かに小学校の教科書の隅から隅までを理解するような膨大な知識は必要で、

それだけで解ける問題も中にはあるが、

難問は、その知識だけでは到底解けません。

 

たとえば算数の文章題には、

「和差算」や「旅人算」や「つるかめ算」などの特殊算を駆使して解く問題があります。

 

❤︎高度な課題発見・解決能力と論理的能力

 

文章題を解くには、

特殊算を使いこなす技能が必要なだけでなく、

問題文を読解し、

そのなかに特殊算の要素が隠されていることを発見し、

それにどのような順番で進めれば解けるかという見通しを立てながら取り組まなければなりません。

 

このように、

高度な課題発見・解決能力と論理的な能力が求められています。

 

❤︎知識のマネージメント

 

一見複雑な図形や数列の問題の中に、

法則性を見いだし、解いていきます。

 

この時試されるのは、

未知の状況に接して狼狽することなく、

もてる知識を総動員して、

道理を見極める能力にほかなりません。

 

いわば、知識のマネージメントです。

 

❤︎地道に解く

 

条件に合う数字を地道に書き出すことでようやく答えにたどり着ける問題もあります。

 

こらは、根気さが要求されます。

 

❤︎国語の記述式問題もあたり前

 

中学受験の国語では、

記述式の問題が多く、

 

大学入試改革では、

30字、40字、120字程度の記述式問題出すか出さないかで大騒ぎになりましたが、

その程度の問題は中学受験では普通に出題され、

中学受験生は当たり前に解くことができます。

 

❤︎ 就職試験のSPIの問題にそっくり

 

また、

実は中学受験算数の"一行問題"と呼ばれる基礎的な問題は、

就職活動で受検することが多いSPIという適性検査の"非言語分野"の問題にそっくりです。

 

ビジネスにも通用する実用的な算数だということです。

 

❤︎飛び級の特殊算批判に対する一つの解答

 

発達心理学者のジャン・ピアジェによれば、

7~11歳(小学生)を❶具体的操作期

11歳以降(中学生以降)を❷形式的操作期

と分類しています。

 

❶具体的操作期には、

 

取り扱える思考の対象は、具体的に認識できるものに限られます。

 

算数では、

「りんごが5つ、みかんが3つ、合わせていくつ?」

のように具体物をイメージして考え、

 

理科では、

酸素と水素が結びついて水ができる化学変化も、

「試験管の中に酸素と水素を入れて火をつけるとポン!という音を立てて燃え、試験管の内側には水滴がつく」

というように現象を見せて理解させます。

 

❷形式的操作期になると、

 

目には見えない概念上で、論理的思考することが可能になります。

 

だから、

数学では文字式を扱い

理科では化学式を扱います。

 

そうなると、

実体をともなわずとも概念上の演算だけで難問が処理できるようになります。

 

❤︎小学生で方程式を学ぶのは時期尚早

 

心理学的に見て、

具体的な学びが土台になって、

歳を経るごとに、だんだんと

形式的(抽象的)な学びにその実感が通うということです。

そして、その年齢が11歳頃です。

 

だから、

小学生の具体的操作期に、

方程式を学ぶことは、時期尚早で、

もっと具体的な思考をさせるべきなんです。

 

それにうってつけの問題が、

中学生受験の文章問題です。

 

❤︎具体的な創意工夫を求める特殊算

 

例えば、

方程式という便利な道具を持っていない小学生が、

中学受験の文章題を解くのは、

自分の持っている具体的な道具を組み合わせて、

なんとか対処するための訓練です。

 

便利な道具を手にする前に、

あえて面倒くさい思考上の創意工夫を経験することに意味があります。

 

❤︎特殊算は、論理的思考の土台

 

そして、

この具体的に創意工夫した思考力が土台となって、

後々の大きな力になります。

 

それは、

抽象的、概念的な論理的に思考する理解を

助けて、より深いものにするからです。

 

❤︎図や理屈で理解しながら答えを模索する

 

同じ問題を解いても、

方程式で解くのと特殊算で解くのとでは頭の使い方がまるで違います。

 

方程式を知っていれば作業として答えが出せる問題も、

特殊算、例えば、和差算であれば、

線分図を描くことで与えられた条件を可視化し、

視覚的に問題解決のヒントを見いだし、

理屈で理解しながら答えを導き出さなくてはなりません。

 

❤︎創造的な論理的思考力

 

中学受験の文章題は、

条件を整理したり、

視点を変えたりしながら取り組む、

極めて創造的な論理的思考力を試す問題です。

 

これに象徴されるように、

中学受験の勉強とは、

小学生段階の知識と技能を使って、

どこまで高度な思考が可能かに挑戦することです。

 

❤︎持っている具体的な知識でなんとかする

 

鍛えられるのは、

速く正確に正解を求める能力ではなく、

手持ちのものでなんとかする知恵です。

 

いつも用意周到にいうわけにはいきません。

想定外はことがおこります。

 

そんなときには、

手持ちのものでなんとかする知恵こそがものをいいます。

 

高校受験や大学受験に

特殊算数は不要かとしれないが、

子どもの成長を考えたときに、

特殊算的な思考が大切です。

 

❤︎まとめ。小学生には方程式より具体的な知恵を

 

小学生の時期は、具体的操作期です。

具体的な思考を磨くためには、

中学受験の文章題が最高の教材です。

高度な具体的な思考力が身につきます。

 

そして、

この思考力を土台にして、

中学生以降の形式的操作期に、

方程式など、数学の抽象的な思考を学ぶことが、

脳の発達年齢に相応しい学びになり、

 

算数での具体的な学びの広さ深さが、

数学の抽象的な学びを、

よりスムーズに

よりスピード感を持って

より深く理解できるのだと思います。

 

そのスピード感が、

学力を伴った飛び級になるのだと思います。