映画「アメイジング・グレイス」を観て
賛美歌の「アメイジング・グレイス」は、世界中、特にアメリカでよく歌われている。この歌については、イギリスのジョン・ニュートンが、若かりし頃奴隷船の船長として2万人もの奴隷を死に追いやってきたその悔恨の思いからつくったということをご存知の方も多いと思う。でもそのジョン・ニュートンを師と仰ぎ、奴隷貿易廃止法を成立させたウィルバーフォースという政治家を知っている方は多くないと思う。この映画はそのウィルバーフォースという政治家の姿を史実を元に描いた秀作だ。1780年、21歳の若さで国会議員となったウィルバーフォースは、奴隷貿易の実態を知り廃止運動に加わる。1791年奴隷貿易廃止のための最初の法案を出すが、88対163の票決によりあっさり否決される。それから彼は少数派の仲間と共に長い闘いを始める。さまざまな妨害や彼自身の病気などもあり、廃止法案は何度も提出されるが否決が続く。だが彼は自分の信念を貫き闘い続ける。そして、1807年、イギリス議会で283対16の圧倒的賛成で奴隷貿易を廃止する法案が成立する。彼がこの運動を始めてから何と20年の時が経っていた。
日本では政党が党議拘束をかけ、国会議員は賛成、反対の数合わせだけの存在になっている面もある。また、国会議員個人がある事柄にどれだけこだわっているか疑わしいし、国会議員による法案提出はほとんどない。ウィルバーフォースの姿を見ていると、初めは少数であっても個人が弱者の人権を守るために粘り強く闘い続けることで政治は変わるのだということ、それはその国のみならず世界を変えることになるのだということ、またそういう政治家個人の力は偉大なのだということを強く感じる。多くの方、特に日本の国会議員にはぜひ観てほしい映画だ。