保育の質
「虐待」や「不適切な保育」と呼ばれるものの対極に「質の高い保育」というものがある。
どういった保育が「質の高い保育」なのかというところは、それぞれ考え方によって多少の違いはあるかもしれないけれど、私が考える質の高い保育はこんな感じ。
- 個々の発達を見極めて、それに合った環境を適宜設定する
- 子どもの伸びようとする力を信じて阻害しない
- 子どもが自分で考えて選択できるように、大人の考えを押し付けない
子どもの安全、危機管理などは当然のことなので、ここではあえて省いている。
また、保護者への子育て支援は「保育」とはまた違ったアプローチだと思うので、また別の機会に。
それじゃ、どうやってこの「質」をあげていけばいいのか。
そう考えた時に、やはり大事だと思うのは「環境」なのではないかと思う。
子どもに限らず、人って環境で大きく変わるものだと思うのです。
例えば、どんなに人道的な考え方を持っていても、自分や家族の命が脅かされるような環境(例えば戦争とか)では、自分と家族を守る為に戦ったり、屍を乗り越えて避難せざるを得ないでしょう。
人は持って生まれた気質と、生まれ育った環境との相互作用により、様々な考えや思考を持ち、それがパーソナリティを作っていく。
その時々の選択や判断は、自分のパーソナリティを基礎にしながら、今までの経験を基にして行う。先程の戦争の話で言えば、守るために戦う人もいれば、殺されないようにより多くの人を殺そうとする人もいる。
一人で逃げようととする人もいれば、できるだけ多くの人と共に逃げて生きる道を見つけようとする人もいる。
中には自分の命を投げ出しても、他の多くの命を救おうとする人もいる。
話は随分大きく反れてしまったが、置かれた環境によって、人の行動は変わるということ。
保育士の話に戻ろう。
保育士にとっての良い環境とは何だろう。
・身の安全が保たれていること
・自分のスキルが活かされること
・ストレスなく人との関係を築けること
・自分自身が周囲の人に認められ、正しく評価されていると感じられること
・ライフワークバランスが保たれていること
でも今、大半の保育園の環境は真逆じゃないだろうか。
- 自分や家族の体調が悪くても、気軽に休めない。休む場合は自分で代わりに出勤してくれる職員に交渉しなくてはいけない園もある。
- 昔ながらの支配的な保育を行っている保育士が先輩であったら、それに異を唱えることは難しい。
- スキルアップのために研修に参加したくても、時間的に厳しい。
- 園長や主任などからのハラスメント
- 子どもや保護者の為にと新しい事をやろうとすると、先輩から否定される
- どんなにがんばっても、給料は上がらない。
- 育児との両立は難しい為、妊娠したら退職を余儀なくされる。
もっといろいろとありそうだが、こんな環境で、保育の現場に良い人材が集まるだろうか?
また、このような環境で、保育士が質を上げることができるだろうか?
もちろん環境だけではなく、保育士自身の意識の低さもあると感じている。
保育士の資格があるからと言って、「保育の専門家」だと堂々と言える保育士がどれだけいるだろうか?というのもある。
専門家になる為には、やはり国家試験を受けて取得できる資格にするべきだと個人的には思っている。
単位取得と同時に得られる保育士資格とは区別して、保育師とするなど資格の差別化は必要かもしれない。
保育の質を上げる為には、保育士のレベルを上げることと、保育士の働く環境を変えること、この二つを同時に進めなければいけないと思っている。
不適切な保育が生まれる背景
そして不適切な保育だが、これも結局は同じことのように思う。
最低限の保育士レベルを維持し、働く保育士が心身の健康を維持できるレベルの環境であること。
これが維持できていない保育園で不適切な保育が起きる。
健全な集団であれば、不適切な保育をする保育士に対して、指摘ができるはずである。
指摘できない環境がそこにあるということ。
指摘できない状況が続くと、それが通常になる。
そこにいる保育士が染まっていって、異常が通常になってしまうと、それが当たり前になる。
当たり前になってしまうと、適切な保育をする人が異質になってしまい、居心地が悪くなり、離職率が高くなる。
そうすると慢性の人不足に陥っていく。
ある時気付いて、不適切保育を無くしていこうとしても、その時には不適切保育をする保育士が多勢になってしまっていて、強く指摘すると退職されてしまい、運営することができなくなってしまうため、強く指摘することもできない。
悪循環に陥り、こうなったら自浄していくことは厳しくなってくる。
小さな法人であればなおさらである。
本当に「こどもまんなか社会」を実現したいなら
これではいけないと、保育士の配置基準を変え、働く環境を整え、研修を受けやすくすることで保育士の質を上げ、結果として保育の質を高めている園がある。
全国的には少数ではあるが、その園では保育士の離職率が低く、採用倍率が他と比べ物にならないレベルだという。
何が必要なのかというところに気付き、いち早く取り組んだ結果だと思う。
そこで育つ子どもと、不適切保育を行う園で育つ子ども。
どのように育つかは想像できるだろう。
こどもまんなか社会を実現したいなら、子どもが一日の大半の時間を過ごす保育園の環境を整えるのは大事なこと。
人的環境である保育士の質を上げるために、研修を受けさせればいいとか、給料に月々数千円上乗せするとか、それだけでは到底無理です。
私は、不適切な保育を行っている園が特別だとは思っておらず、不適切な保育を行っている保育士が一人もいない保育園の方が少ないかもとさえ思っています。
もちろん程度に差はありますが・・・
「不適切な保育はしないようにしましょう」なんて通知をするだけでは、無理です。
政府は甘すぎる。
実は、不適切な保育をしている保育士のほとんどは、自分が行っている保育が不適切だと思っていないことの方が多い。
自分のストレスを、弱者である子どもに向けていることに気付いていない。
保育士が、「保育」を学ぶ必要があるということは強く感じている。
保育士であることに責任を持って、自分を律し、そして職員同士の同僚性を高め、
園の中で自浄して高め合える風土を作ることが大事だと思っている。
※あくまでも、私の個人的見解なので、賛否両論あるとは思います。
