きっと、誰にでも止められない気持ちってあると思うの。誰にでも・・・。
だから簡単にあきらめないで・・・・・夢を・・・・・捨てないで・・・・・


「私、春斗が好きなの」


秋穂の凛とした声は静かに響いた。春斗はしばらく固まって、やがて声をだした。

「うそ・・・だよね・・・?」

「ううん、本当。私は春斗が好きなの。ずっと・・・」

2人とも黙り込んだ。そして声を絞るように春斗が答えようとした。

「いい・・・・」「だめ!!」秋穂は叫んだ。

「だめだよ。簡単にあきらめないで、自分の気持ちを貫き通して。じゃないと、私・・・・・」
秋穂は一度言葉を止めた。

「春斗と『友達』やめるからね」そう言った。静かに。それでもよく響く声で。春斗は微笑んで

「ありがとう・・・」といって教室を出た。

たとえ辛くても秋穂が涙を流すことはなかった。


「・・・・・お疲れさん・・・・」

ただ、立っているだけの秋穂に冬季は声をかけた。

「・・・どうも」秋穂も普通に笑った。冬季は少し暗い表情になった。

「泣きたきゃ泣けよ。」といいながら秋穂を抱き寄せた。

「今だけ隠してやるから・・・・」

秋穂はそれからぽろぽろ泣き出してあるものを呟いた。


「ごめんね。呼び出して」

「ううん、いいよ。どうしたの?」夏芽は首を傾げた。春斗はもうひかなかった。
秋穂のおかげで・・・・・。

「僕は夏芽ちゃんが好きなんだけど、付き合ってくれる?」夏芽は驚いたがやがて「はい」と答えた。


秋穂が呟いたのは大好きな人に捧げた歌だった。

あなたを捕まえたくて             秋の風は冷たくて      
いつもそっと手を伸ばした          私の羽を散らした
でも届かなくて                少し雲のある凪の空へ
あなたは進んで私は止まっていた     私は今飛び立つことができる

1人残された私は泣き崩れた       思いを口にできたなら
「あなたが幸せならそれでいい」      心は軽くなれる
そんなのウソなの              また笑顔に戻れるなら
ただの強がりだったのにもう言えない   世界とともに歩き出そう

忘れないでほしいの            今度は木枯しが吹くなら
あなたを愛してくれる人がいること     私をその風に乗せて
だから自信をもって             止まってしまったあなたに
私は再び歩き出すから           秋の羽をその手に
あなたの側にはいられない         置いていくから
だからあなたも歩んで            自信をもって歩んで

                     現実と夢は違いすぎて
                     怖いけど今は逃げずに
                     前を見て歩こう


秋穂は歌い続けた。2人の幸せを祈りながら・・・・・。