※ネタバレしてます!!
※病気療養中のため、簡易レポです!!
※療養中じゃなくても、最近ずっと簡易レポじゃん。っていうツッコミはなしの方向で!!
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荒々しいキス。
郁里の頬に、涙が伝った。
郁里「呉用……さんっ」
呉用「君のことを……愛していた」
郁里の心の中に、呉用の悲しい気持ちが流れ込んできた。
(呉用さんが……行っちゃう!)
1:行かないで
2:みんなのことはどうするんですか?
3:私も一緒に←5UP
郁里「私も一緒に行きます!」
呉用「駄目だ!……それだけは…絶対に駄目だ…」
呉用は郁里の髪をやさしくすいて、体を離した。
呉用「愛していた。でも……君に会わなければよかった」
郁里の体から力が抜ける。
呉用は郁里に背を向けた。
追いかけたいのに、体に力が入らない。唇が少ししびれている。
呉用「すまない。少し、君の口に薬を含んだ。しばらくは体の自由が利かないはずだ…」
郁里「ど…うし…て…」
呉用「私は…君に引き止められるのが一番つらい。こんなことをする私を、恨んでくれてもかまわない」
そう言うと呉用は、引いてきた馬にヒラリと乗った。
呉用「……元気で」
馬が走り出す。
郁里「いや…。呉用さん…!い、いや……ぁ!」
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薬が切れてきた頃、郁里は力を振り絞って立ち上がった。
もしかして…という一縷の望みにかけて、周囲を探して回る。
(呉用さん…どこに行っちゃったの?)
郁里の心に絶望がこみ上げてくる。
戴宗「…探しても、軍師はいねえぜ、子猫ちゃん」
戴宗が物陰から出てくる。
戴宗「軍師はああ見えて、情に厚い。子猫ちゃんだってわかってるだろ?」
郁里はコクンと頷いた。
戴宗「考えがあってここから出て行った。それも、恨まれるだけ恨まれて…」
郁里「みんな、分かってくれていないんですか?」
戴宗「責めてやるな。先の戦い、晁蓋サンが亡くなったころからの遺恨がある。頭では、仲間を見捨てるわけないって思っていても、気持ちがついていってないんだ」
郁里「そんな…。教えてください、戴宗さん!呉用さんはどこに……!」
戴宗「軍師が俺に託したことはひとつだけ。子猫ちゃんのことを頼むってことだけだ」
郁里「頼むって…」
戴宗「頼む、としか言われてねぇ。梁山泊軍で困らないようにちゃんと世話してやってくれってことか、それとも…子猫ちゃんの“やりたいこと”を手伝ってやってくれってことか…」
郁里「戴宗さん……!」
戴宗「今ならまだ間に合うぜ…どうする?」
戴宗の問いに対する郁里の答えは決まっていた。
郁里「・・・行きます、もちろん」
戴宗「子猫ちゃんなら、そう言うと思ってたよ」
郁里「呉用さんと離れるなんて・・・もう考えられませんから」
戴宗「こりゃあ、軍師に会ったら、怒られちまいそうだなぁ。子猫ちゃんに手を貸すたぁ、どういうことだ、って」
郁里「必ず、一緒に帰ってくるつもりなので・・・しっかり怒られてくださいね、私と一緒に」
戴宗「・・・ああ。いい顔、してるぜ」
離れていても、呉用の心がなんとなく伝わってくる気がして、郁里は嫌な予感がした。
本当は戴宗が送りたいところだが、任務があって外せないという。
その代わりとして、呂方が現れた。
呂方「呉用さんのところまで、姉御をしっかり送り届けるのは、俺の役目だよ」
郁里「ありがとう・・・・・・!」
呂方「じゃあ、行くよ!」
呂方が郁里を馬に乗せた。
呂方「ちょっと飛ばすよ!気合入れて!」
郁里「うん・・・・・・!」
二人を乗せた馬は、軽快に走り出した。
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郁里「ねえ、呂方くん」
呂方「ん?」
郁里「呉用さんと、その・・・晁蓋さんとの間には、一体何があったの?」
呂方「・・・・・・」
わずかな沈黙のあと、呂方はゆっくりと口を開いた。
呂方「姉御が来る、ちょっと前・・・曾家の軍とぶつかることがあったんだ。その陣頭指揮を晁蓋さまが執っていた」
郁里「どうして曾家と戦うことに・・・?」
呂方「梁山泊は、国からすれば、頭痛のもとだ。その梁山泊を倒せば、国からの評価も上がる。つまり、中央によく思われたいから、梁山泊を攻めようとしたってわけ」
郁里「そんな理由で・・・」
呂方「もちろん、呉用先生は、勝つための作戦を立てていた。でも・・・」
呂方が苦しげに言葉を切った。
呂方「思わぬ誤算があった。晁蓋さまが曾家の罠にはめられて・・・対峙した史文恭に討たれてしまった」
郁里「史文恭・・・」
呂方「呉用さんは、自分の采配が間違っていたから、晁蓋さまは罠にハメられた、って思ってる」
郁里「そんな・・・」
呂方「でも、誰もそんなふうに思ってない。李俊どのだって、ああ言っていたけど、本当は分かってるんだ。でも、呉用先生は自分を責めてる。自分に甘さがあったから、付け込まれた、と」
呂方が悔しげに言う。
呂方「甘さや情けがあると、戦では負けてしまう。きっと呉用先生はそう考えた。だから、晁蓋さまが亡くなって以来、ますます峻烈になっていったんだ・・・」
郁里「呂方くんは・・・呉用さんのこと、冷たいと思わないの?」
呂方「姉御は知ってるか?梁山泊には夫婦がたくさんいて、子供もいるんだ。呉用さんって、その子供たちにすごい懐かれるんだぜ」
郁里「え・・・」
呂方「冷徹非道な鬼軍師なんて陰口叩かれることもあるけど・・・本当に、冷たくて残酷な人間だったら、子供は寄り付かない・・・そう思わないか?」
ふいに、郁里の脳裏に優しい呉用の笑みがよみがえった。
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どのぐらい、駆けただろうか。
二人は曾家の近くまで来ていた。
呂方「・・・・・・いた!」
呂方が小さく呟いた。
郁里「呉用さん!」
馬に水を飲ませている呉用の姿が見えた。
呉用「呂方・・・郁里!?」
郁里は転げ落ちるように馬から降りると、一目散に呉用の元に駆け寄った。
呉用「どうしてここに・・・・・・っ」
郁里「追いかけてきたんです、呉用さんのこと。私は!呉用さんと一緒にいます!」
ふいっと、呉用が視線を逸らす。
呉用「・・・今すぐ帰るんだ。これから向かうところは、君が一緒に行くようなところじゃない」
郁里「嫌です」
呉用「駄目だ。呂方、今すぐ郁里を連れて帰れ」
呂方「呉用先生は、今、梁山泊を抜けているんですよね」
呉用「・・・・・・」
呂方「なら、今、呉用先生の命令を聞かなきゃならない筋合いはない」
呉用「・・・・・・っ。とにかく、帰るんだ。君が来ても、足手まといになるだけだ」
郁里「嫌です。絶対についていきます」
呉用「君は・・・・・・っ。なぜ・・・分からないんだ」
郁里「呉用さんが一人で悪者になって、梁山泊が勝利を得たとして・・・それでみんな喜ぶでしょうか」
呉用「とにかく、勝てばいい。そして、これからの私には、君は邪魔だ」
郁里「邪魔・・・・・・」
呉用「ああ、そうだ。君が、邪魔だ」
郁里は、呉用を追うと決めたときから、胸にひとつの言葉を抱えていた。
それは、覚悟の言葉だった。
郁里「そこまで言うなら・・・私が邪魔だと言うなら・・・私を、殺してから行ってください」
呉用「なっ・・・」
郁里「殺せないなら・・・私はどんな手を使ってでも、呉用さんについていきます」
呉用「・・・・・・・・・ッ!」
呉用は大きく息を吐くと、すらりと剣を抜いた。
呉用「・・・覚悟は・・・できているんだな・・・・・・」
郁里「・・・はい」
呉用は郁里をじっと見据えると、ゆっくり剣を振り上げた。
郁里がそっと目を閉じる。
斬撃が来るかもしれないと覚悟した次の瞬間。
カシャン・・・・・・
何かが土の上に落ちる音がした。
呉用「ずるい人だ・・・君は」
郁里は、柔らかく、温かな感触に包まれた。
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う~ん。まだ食欲がない・・・(´・ω・`)