夕方、Sさんが呼びにきて内診へとむかいました。



午前中に泣いて大騒ぎした、入院用の診察室。

さっきは気づかなかったけれど、壁には女神さまと天使の絵が飾ってありました。
今のわたしにはこの絵すら、なんだかツライ...



先生はそんなわたしの様子を察したのか、申し訳なさそうに話しました。



「マナさん、何度もごめんね。ツライよね。

内診をして、子宮口の開き具合を見ます。
少し張りもあるようだし、このまま自然にお産になるかもしれません。

そうじゃないようなら、ラミナリアという棒を子宮口に何本か差し込みますね。
これは水分を吸って膨らむので、子宮口を広げてくれるんです。
最初は少しで、だんだん本数を増やします。

そして陣痛が来ないようなら、促進剤も使用します」



そういうと、内診台へ移動するように言われました。




「最後にもう一度だけ、エコーで見てもらってもいいですか」



諦めきれなくて。



万が一、もしかして、心臓が微かに動いているかもしれないから。



言いたいのに。




最後




その言葉がどうしても言えなくて。
口をパクパクさせながら泣いてしまいました。



こんなにも重たい言葉だったのか。



言葉の意味を、初めて理解できた気がした。
「最後」って、本当に最後なんだ。


もう2度とない。
いちばん終わり。


なんて重たい言葉なんだろう。
なんて深い言葉なんだろう。



わたしは今、たった3文字の言葉を口に出すことすらできない。



そんなわたしを、Sさんが何も言わずに抱きしめてくれました。




Sさんに手を引かれ、奥の内診台へ移動しました。



怖い。
怖くて怖くて、Sさんの手を離せない。


「もしよければ、このまま繋いでいてもいいですか?」


優しいSさんの声に、何度も何度も頷きました。




ゆっくりと回転しながら上がっていく内診台。
こんな気持ちで乗るものじゃないはずなのに。



「子宮口、まだまだしっかり閉じていますね。
少し、刺激します」



痛い。とても痛い。



痛いけど、ガマンしなきゃ。
わたしはもっともっと、痛くされなきゃいけないんだ。


真っ白な天井を見つめて痛みに耐えていると、Sさんがぎゅっと手を握ってくれました。

目に涙をいっぱい溜めて。



「椅子、戻しますね」



ラミナリアという処置は?と思っていると、先生が



「ご主人に、外出させて欲しいって言われていてね。
昨日から、いきなりだったでしょ?

あまりに見てられなかったから、1人にできないと思って急いで入院してもらったんだけど。
今はご主人も一緒だし。

明日の夕方まで、外出してもいいですよ。
何かあれば、すぐ戻ってきてくださいね。

もちろん、病院にいていただいても大丈夫です。
外出する際は、看護師に行き先と戻り予定を伝えてくださいね。」




そう言われて部屋へ戻ると、アキラが誰かと電話しているところでした。

わたしに気づき、すぐに電話を切ったアキラに


「外出できるって」


と伝えました。



「よかった!少し外の空気吸いに行こう!」


明るく返事をして、立ち上がるアキラ。





でも、わたし今とてもお腹が痛い。



それに。
外にはたくさんの人がいる。



家族連れ
妊婦さん


そして、赤ちゃんも。



見たくない。
見れない。

今、幸せそうな人なんて見れない。




そんなわたしに、アキラは明るく


「最後なんだから、親子水入らずで過ごそ」


アキラにできる、最大限の気遣いだと思う。
わたしのために、してくれていることだと思う。



「そうだね」



笑顔で答えられたと思う。



きっと笑えたと思う。







「最後」




あなたは簡単に言うんだね...








\お腹の赤ちゃんの心音が聞ける/

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