1月末に開催された、

平野雄介×山本大介による

普段使いのアート作品展「コイテン」。

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そのオープニング・パフォーマンスを、

構成・演出:伊東祐輔

出演:うえだななこ、伊東祐輔

という形で上演。

オープニングパーティー内で始まる約30分のパフォーマンス。

狭い空間の中、約30人のお客様が囲みで観て下さり有難い限りでした。

週末の夜に関わらず、足を運んで頂き、

ありがとうございます。


今回は、平野雄介作品が万年カレンダー、山本大介作品がペットボトルホルダーという事で、空のペットボトルに、日々刻んでいく記憶や感情を詰め込んでいくというストーリー仕立てにしてみました。

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テキストは朗読しようかと最初は思いましたが、過去を振り返るイメージで音楽と共に全て録音。

スーツの胸ポケットから聴こえる心の声のようにしてみました。

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下記、その時のベース・テキストです。


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タイトル「濃いは恋に似ている。」

著:伊東祐輔



「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

なんて歌を子供の頃、耳にした事がある。

歌と言ってもメロディがある訳でもなく、

俵万智という歌人が詠んだ歌。


いつかそんな女心が分かる大人になるのかなと思っていたけれど、

気づけば何となく歳を重ねてしまった。


※男、一人で踊る。シンプルに。


多分、僕は捨てられないカラのペットボトルみたいなものだ。

お茶を飲み終わった後、何故かいつか使えるんじゃないかとラベルを剥がし、洗って干したペットボトル。

どこにでもある、無色透明の空っぽを包み込んだペットボトル。

役に立つ訳がなく、何かに満たされる事もないから、勿論出番なんてやってくる訳がない。

そんな空虚な毎日の繰り返しには、当然のように飽きが来る。
だから、少しばかりの刺激が欲しくて、行きつけの呑み屋みたいなものが出来る。

ダイニングバーと小洒落た装いをしたところで、少し洋風なだけの居酒屋。

〆のお茶漬け、なんてメニューがある時点でダイニング感もバー感もあったものじゃない。

その辺りが自分にお似合いだと勝手に居心地の良さを感じ、行きつけにしている。

そんな場所で僕は、彼女に会った。

※ワイングラスを持った女、入ってくる。

珍しく混んでいた夜だった。
その頃には、店員にも常連認定された自分は、相席をお願いされた。

一杯飲んだら帰るつもりだったし、
決定前提の顔した店員のお願いに拒否の選択はないようだった。

その席に座っていたのが彼女だった。

グラスの白ワインを片手に、
自分が高校生くらいの頃に流行ったUKロックに、指がリズムを刻んでいた。

何となく自分もグラスワインを頼み、
挨拶を交わす訳でもなく、自分も不思議と懐かしい曲にリズムを刻んでいた。

※グラスを軽く合わせて乾杯する仕草。

サラダ記念日風に言うなら、多分これが僕らの白ワイン記念日だったんだと思う。

※オアシスとかブラーのようなUKロックで、女が踊る。

彼女の存在が、カラのペットボトルだった僕に色んな色を注ぎ始めた。

初めてのキスは、さっき飲んだばかりのショットグラスの上に置かれたレモンの香りがした。
音楽に身を任せるって言葉が初めてしっくりくる夜だった。

※クラブミュージック(それをいつの時代に合わせるかは未定)で、時折アイコンタクトをしながら、音楽に身を委ねる2人。

一緒にいるという行為は、時にスパイシーな状況を生む。
それは決して刺激的な意味ではなく、どことなく苦くて塩っぱい。
そんな風に思った日をこっそり自分だけの塩胡椒記念日にしてみた。

※女、無音(もしくはノイズ)の中、自分の身体と男の身体を比較している。その行為を遮るように次のフレーズに入る。

女々しいという言葉の置きどころが難しいと感じる日々。
女性らしさと類語みたいな顔をしながら、高い壁を越えられない。
僕はよく泣く。彼女は上手く泣けない。
だから、彼女は、夜中にタマネギを刻むんだと言う。
僕には分からない、彼女のタマネギ記念日。

※女、実際にタマネギを刻むという行為(泣くの同義として)。もしくは、ただただ音を刻むという行為。それは音楽にシンクロしていく。

僕たちの関係はきっと、近くて遠くて、遠くて近い。
押し問答のような関係を、彼女は「和洋折衷ね」と言った。
僕は「お酢」で、彼女は「オリーブオイル」らしい。
自分だけオシャレでズルいと言ったら、混ざれば一緒よと、よく分からない答えが返ってきた。
じゃあ、混ざってみる?と聞き返すのが僕の精一杯。

※男と女、触れ合う。それは踊る事で無くても良い。ただ優しく触れ合う。
けれど、女は音楽に引き摺られるように明後日の方向に進んでいく。

混ぜてはみたものの、やっぱり少し気を抜くと彼女は油のように僕の上へと舞い上がっていく。
だから僕は、今日もペットボトルをいっぱいにして、ひたすら振り続ける。
これがきっと僕たちなりのサラダ記念日。

※混ざり合ったドレッシングをサラダにかける男。

終わり。




……追記

何気ない日常も、視点を変えれば何かの記念日。そこに一つ印を付ければ、濃い日に変わるかも。
それを自分の手で掴み取るかどうかは、自分次第……なのかな?


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以上、普段使いのアート作品展「コイテン」でのオープニング・パフォーマンス用テキスト。

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濃いは恋に似ている。かもしれない。

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平野雄介作品、山本大介作品、共に今後もチェックしてみてくださいませ。
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相変わらず、昨年を振り返るタイミングを逃し、
今年の事も2月半ばに漸く1月を振り返る始末。。。

今年は寝込んでたのもありますが、
年末年始に風邪と戦いつつ書きあげた脚本・演出作品。
おしゃれ紳士や今までの個人プロデュース作品のエッセンスもありつつ、違う一面もたくさん観て頂けるかと思います。
芝居ベース、時々ダンスの公演です。

takALice公演「Alice in Moon World.」
3/17〜20に池袋のシアターKASSAIにて。
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詳細は http://takalice.proudjapanproject.com をご確認くださいませ。

こちらのご来場も心よりお待ちしております。